文通費改革、暗礁に=合意うやむや、自・立腰重く
国会議員に月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革が暗礁に乗り上げている。改革を重視する日本維新の会が法改正に向けた合意を先の通常国会で自民党から引き出したが、期限を明示しなかったため、約束はうやむやに。維新の「手柄」を警戒してか、立憲民主党の腰も重く、行方は見通せない。
岸田文雄首相(自民総裁)と維新の馬場伸幸代表は5月末、旧文通費について「使途公開と残金返納を義務付ける立法措置を講じる」とうたった合意書を交わした。維新が自民の政治資金規正法改正案に賛成するのが前提だった。その後、自民が通常国会中の法改正見送りに傾いたため、維新は自民の規正法改正案への賛成を撤回した。
しかし、合意書自体が白紙に戻ったわけではない。首相は通常国会最終盤、党首討論で馬場氏と向き合い、「(旧文通費改革を)一刻も早く成立させたい」と強調。「合意の結果、協議のプロセスが始まった。ぜひやろう」と呼び掛けた。
もっとも、首相の掛け声とは裏腹に、自民の動きは極めて鈍いのが実態だ。旧文通費改革に向け、衆院議院運営委員会は6月、衆院の正副議長と事務総長の経験者から意見を聴取することを決定。それから2カ月が過ぎても、聴取日程は一部しか決まっていない。参院はヒアリング対象者の人選すら終えていない。
自民国対関係者は「規正法改正に反対した維新に協力する必要はない」と断言。自民派閥の裏金事件や規正法改正を受けて国会議員は政治資金を集めづらくなっており、自民幹部は「さらに収入が減れば、金持ちしか議員になれなくなる」と「旧文通費頼み」の苦しい台所事情を漏らす。
立民は旧文通費改革を盛り込んだ法案を2022年に維新などと共に衆院に提出したが、維新と足並みをそろえて改革を自民に迫る機運は乏しい。維新関係者は「立民はポーズだけ。やる気はない」と批判。維新内には「自民は総裁選、立民は代表選で、旧文通費改革どころではない」(幹部)とあきらめに似た空気も漂う。
旧文通費改革に注目が集まったのは、21年の衆院選後、在職期間1日だった月の分が満額支給され、批判を浴びたのがきっかけだ。日割り計算は22年に導入されたが、使途公開と残金返納は実現していない。国会関係者からは「放置すれば政治不信に拍車が掛かりかねない」との声も漏れる。
[時事通信社]
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