涙し、励ました恩師=再起誓い、万感の金―レスリング・鏡選手〔五輪〕
金メダルに輝いたレスリング女子76キロ級、鏡優翔選手(22)=サントリー。恩師の夢をかなえるべく目指した東京五輪は代表の座を逃し、涙した。再起を誓い挑んだパリで見事雪辱を果たし、日本勢初の女子最重量級制覇を成し遂げた。
「私が先生を五輪に連れて行きます」。下野サンダーキッズレスリング(栃木県)で鏡選手を指導した元監督の舩越光子さん(50)は、真剣なまなざしで宣言する小3の鏡選手の顔が忘れられない。
自らも元選手で、かつて世界女王に輝いた舩越さん。だが、現役時代、五輪種目にレスリング女子は採用されていなかった。「五輪に出たかったですか」「そりゃ、あればね」。練習の合間に2人で交わした雑談が、鏡選手の心に火をつけた。
1番が好きで、2番になると泣いて悔しがる負けず嫌い。武器は瞬発力を生かした片足タックルで、舩越さんは「勝負勘が良く、コンマ数秒の隙も見逃さなかった」と振り返る。直接の指導は鏡選手が日本オリンピック委員会のエリートアカデミーに入る中3まで続いた。
高校時代にインターハイで優勝を重ねた鏡選手は高3で東京五輪の代表選考に挑んだ。だが、主戦場の76キロ級で敗退し、階級を68キロ級に下げ、背水の陣で挑んだ試合にも敗れた。
夢破れ、舩越さんと抱き合って泣いた。「4年後はうれし泣きでこの格好をしようね」。そう誓い合った。
2022年末に大胸筋断裂の大けがをした鏡選手。リハビリ中、筋力強化に取り組み、昨年の世界選手権では、北京五輪銅メダリストの浜口京子さん(46)以来20年ぶりとなる最重量級での優勝を成し遂げ、パリ行きを決めた。
「頑張ろうね」。試合後、舩越さんは喜びの涙を流し、まな弟子を熱く抱擁したという。
今大会、優勝が決まると満面の笑みを浮かべ、会場の歓声を一身に受けた。日の丸を掲げて観客席にいる家族らの元に駆け寄り、喜びを分かち合った。
[時事通信社]
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