2024-08-11 09:50スポーツ

頂点へ、こだわった「姿勢」=北口、1投で勝負あり―陸上女子やり投げ〔五輪〕

陸上女子やり投げ・北口榛花
陸上女子やり投げ・北口榛花

 金メダルが確定して迎えた最終6投目。女子やり投げの北口は涙をこらえながら「自分のことに集中しなきゃ」と臨んだ。落下したやりを見届け、約7万人の大観衆の喝采を浴びた。「うれしいだけじゃ足りないぐらい」。鐘を打ち鳴らす優勝者の儀式ではしゃぎ、日の丸を掲げて何度も跳びはねた。
 1投目で勝負を決めた。「いつもの6投目ぐらい集中した」。試技ごとに修正を重ね、最後に逆転するパターンが多い世界女王だが、いきなり今季自己最高の65メートル80をマーク。この好記録が重圧になったのか、他の選手は最後まで伸び悩んだ。
 昨年の世界選手権に続くビッグタイトル獲得を目指し、「姿勢」にこだわってきた。北口が東京都内の治療院を初めて訪れたのは日大在学時。現在はトレーナーとして海外遠征に同行する上野真由美さん(47)によると、179センチの大柄な体を小さく見せるような猫背が染み付いていた。「今みたいに笑うこともなく、すごくしょんぼりした感じ」。自信なさげだった当時の印象を振り返る。
 世界的に活躍するアスリートをサポートしている上野さんらは「コンプレックスを持っていても、世界では戦っていけないよ」と助言。すると、次の週には要望をはっきり伝えてくるようになった。
 けが防止のため、猫背の改善に着手。試技の合間はうつぶせを保った。骨盤を前傾させる目的で、海外転戦時でも座面が前に18度傾いた椅子や、自動車などの座席の背もたれに置く特製マットを持ち歩いた。あるべき姿勢の維持を徹底したことで、持ち前の柔軟性も生かせるようになった。
 パリの選手村に入ってからは、自身が持つ日本記録を超える70メートルの大台に乗せる夢を毎日見ていた。「65メートルではまだ満足できない。また頑張る理由ができてほっとした。現実で70メートルを投げたい」。日本陸上界の歴史を塗り替えた直後に、飽くなき向上心をのぞかせた。 (時事)

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