異例の歴訪中止、総裁選も意識=出発1時間40分前、岸田首相決断
岸田文雄首相は9日から予定していた中央アジア歴訪を急きょ取りやめた。南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が出たことで、その備えを優先したためだが、9月に予定される自民党総裁選に影響が及ぶのを避ける狙いもあったもよう。異例の「ドタキャン」に政府内は混乱した。
「念には念を入れ、1週間程度は国内にとどまり、政府の対応や情報の発信に万全を期すべきだと判断した」。首相は長崎市での記者会見で、今回の訪問を中止する理由についてこう説明した。
当初、12日までの日程でカザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルを訪れる予定だった。長崎の平和祈念式典に参列後、長崎空港を午後3時ごろにたつことにしていた。
だが、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が8日午後に発生。気象庁が初めて南海トラフ地震臨時情報を発表すると、状況が一変した。首相は歴訪の可否について判断を迫られた。
8日夜の段階で、首相は記者団に「適切に判断したい」と述べるにとどめた。自民党幹部には、長崎滞在中に決めると電話で伝えた。
長崎には9日午前9時ごろに着いたが、11時すぎの林芳正官房長官の会見では発表されず、首相が取りやめを会見の場で公表したのは午後1時20分ごろ。出発予定時刻の1時間40分前だった。
決断が遅れたのは、歴訪の可能性をぎりぎりまで探ったためだ。カザフで開く中央アジア5カ国との初の首脳会合には、この地域に強い影響力を持つロシアや中国をけん制する狙いがあった。首相周辺も8日夜、「中ロのどちらかに寄らないでほしいと首相自ら伝えることに意味がある」と力説していた。
最終的に南海トラフ地震への備えを優先したのは、総裁選を意識したためとみられる。気象庁は今後1週間、巨大地震に注意するよう呼び掛けた。首相の不在中に発生すれば、「危機管理の最高責任者」として批判される可能性が高い。
政府筋は「世論を恐れたのだろう」との見方を示す。ある岸田派幹部は「失点の材料をつくらないことだ」と語り、首相の判断に理解を示した。
中止発表を受け、首相に同行するため長崎空港で待機していた外務省関係者には戸惑いの声が広がった。幹部の一人は「急に決まった。そうでなければ、こんなに大挙してここまで来ない」と肩を落とした。
[時事通信社]
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