被害想定地域、備え加速=非常食購入急ぐ人も―臨時情報発表・南海トラフ
南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」発表を受け、甚大な被害が想定される太平洋側の地域では9日、自治体などが準備を急いだ。町では非常食などを急いで買う人の姿も見られた。
最大34メートルの津波が想定される高知県黒潮町では、町全体に「高齢者等避難」を発令して29カ所に避難所を設置。ただ、福祉避難所に指定された特別養護老人ホーム「かしま荘」の福島まり子施設長は「要支援者が実際に避難してきた場合、どう動けばいいのか。未経験なので分からないことも多い」と不安そうに話す。
地震発生後3分で津波が到達するとされる和歌山県串本町は災害対策連絡室を設け、職員30人近くが24時間態勢で待機する。通園バスが海の近くを通るという認定こども園「くしもとこども園」の湯口いずみ園長は「臨時情報発表は初めてで最初は戸惑ったが、今は落ち着いて避難経路の再点検を進めている」と話した。
一部の店舗では品不足も起きた。ホームセンターのカインズ清水店(静岡市清水区)では水や非常食の品切れが相次いだ。同市の主婦海老原ゆかりさん(46)は、SNSで水や米が店頭から消えたとの投稿を見て「軽くパニックになった」という。市内の店を回ったが「水だけはどこにもなくて、あきらめて麦茶を買った」と苦笑いした。
雑貨店のハンズ名古屋店(名古屋市中村区)では、防災用品を買い求める客が目立った。非常食用のアルファ米や携帯トイレを買う人が急増し、空の棚も。担当者は「普段から備えた上で、必要分だけ買ってほしい」と訴えた。耐震マットなどを買うため来店した愛知県東郷町の40代女性は「寝ている間にテレビや家具が倒れたらどうしよう」と不安げに話した。
臨時情報は夏の楽しみにも影を落とす。海水浴で有名な和歌山県白浜町は町内4カ所の海水浴場を1週間程度閉鎖することを決めた。同町で10日に予定されていた花火大会も中止された。
一方、徳島市は11日から開催予定の「阿波おどり」について「中止を要請しない」と決定。実行委員会の担当者は「安全な開催に向け、津波避難計画の再確認を行っている」と話した。高知市の「よさこい祭り」(9~12日)も、避難場所周知などの対策を取った上で予定通り開かれる。
[時事通信社]
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