須崎、涙の銅メダル=喪失感乗り越え、新たな一歩―レスリング女子〔五輪〕
負けた直後には出なかった涙が、勝った瞬間にあふれ出てきた。レスリング女子50キロ級の須崎優衣選手(25)=キッツ=が銅メダルを獲得。「金メダルを獲得する姿を見せられず、ごめんなさいという気持ちと、一緒に戦って応援してくれた方々に対して感謝の気持ちだった」。顔の前で手を合わせ、スタンドへ何度も頭を下げた。
前日は1回戦で不覚を取り、連覇の夢は消えた。2014年2月の国際大会デビューから積み上げた24大会連続優勝と、海外選手相手の94連勝はいずれも途切れた。
敗戦後は時間がたつにつれ、喪失感にさいなまれた。「協力してくれた方々の努力も、私のせいで無駄にしてしまった。この3年間の人生が全て否定されたというか、無駄な時間を過ごしてしまったのかという気持ちだった」。応援のため、現地を訪れていた家族と一緒に泣いた。
気持ちを立て直して迎えたオクサナ・リバチ選手(ウクライナ)との3位決定戦。頭の中に3年間の日々が駆け巡った。
「不安はない」と言い切れるまで重ねたスパーリング。右膝の負傷を隠して臨み、優勝した昨年の世界選手権。さらなる強さを求めて単身乗り込んだ海外での武者修行。「勝って終わることで、少しでも自分を肯定してあげたい」と思えた。
後悔しないよう、徹底的に攻めた。片足への高速タックルからポイントを重ね、第1ピリオドで8点。第2ピリオドは開始17秒で相手の背後を取って2点を奪い、無失点のテクニカルスペリオリティー勝ちを収めた。
レスリングに向き合う上で「執念」という言葉をよく使う。中学2年で入門したJOCエリートアカデミー時代、ノートに何度も書いた言葉だ。パリ五輪最後のマットは、まさにそれを体現する戦いぶりだった。
視線は既に未来へ向いている。「パリ五輪の銅メダルを4年後、8年後の金メダルに必ずつなげる」。真の最強を目指し、新たな一歩を踏み出した。 (時事)
[時事通信社]
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