金に導いた「強敵」=仏人コーチの魔法の言葉―フェンシング・男子フルーレ〔五輪〕
東京で立ちはだかった強敵が、パリで栄光への導き手となった。日本のフェンシング男子フルーレを指導するエルワン・ルペシュー・コーチ(42)。フランス代表として活躍したレジェンドが、日本の選手に大きな影響を与えた。
日本が団体4位だった東京五輪。ルペシュー選手のいるフランスは準決勝で日本を下した。そして同五輪での団体金メダルを置き土産に引退。現役時代からジュニアの育成に携わり、母国で指導者としての道を踏み出そうとした時、日本からオファーが届いた。日本協会の青木雄介強化本部長は、その狙いを「選手たちにとって、絶対勝てなかった人の言葉はすごく重いと思った」と明かす。
来日して最初に取り組んだのが、選手に自信をつけさせること。「私が来る前から強かったが、彼らはそれを自覚していなかった」。真っ先に覚えた日本語は「気にしない」。試合ではミスを責めず、前向きな言葉を掛け続けた。完璧主義者で、ネガティブな思考にとらわれることもあった松山は、「トライした中での失点やミスは気にしなくなった」と自身の変化を自覚している。
練習には厳しいルペシュー・コーチは、「日本は量は多いが、強度が低い」。求めるのは試合同様に本気で勝ちにいく姿勢。敷根は「コーチに言われて、惰性でやっている部分があったと気付いた」。疲れた状態から全力で剣を振るうことで、精神的なタフさも増した。
ルペシュー氏と同じく小柄な飯村には、長身の選手との戦い方を教示。守備のうまさに定評のあった松山は、より攻撃的な戦法を伝授され、「技術面での向上は、細かいことを挙げたら切りがない」。
心技ともにたくましくなった選手たちは、昨年の世界選手権で優勝。世界ランキング1位として臨んだ恩師の母国での五輪で金メダルを奪い、最高の恩返しを果たした。 (時事)
[時事通信社]
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