半導体人材、奪い合い激化=求人14倍、年収もアップ
半導体業界で人材の奪い合いが激化している。経済安全保障の強化や生成AI(人工知能)の普及を追い風に市場は拡大、国内でも北海道や九州で大規模工場の建設が進む。リクルートによると、関連求人数は10年前と比べて約14倍に増加し、転職時に提示される年収もアップしている。
調査は、転職サイト「リクルートエージェント」に掲載された半導体や製造装置などに関わるエンジニアの求人掲載数の集計。それによると、2023年度の求人数は13年度の14.24倍となり、特に受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が進出した九州(九州・沖縄エリア)、ラピダス(東京)が先端半導体の量産準備を進める北海道(北海道・東北エリア)はいずれも17年度比5倍超と人手不足感が顕著だった。
また、提示した年収が「600万円以上」の企業の割合は、18年度の13.1%から23年度には19.5%に増加。逆に「400万円未満」と答えた割合は42.7%から30.3%に減った。
転職経験がある30代の男性エンジニアは、「外資で好待遇の求人が目立つ。日系の1.5倍を提示する企業もあるようだ」と話した。
電子情報技術産業協会(JEITA)が今年5月にまとめた試算によると、キオクシア(東京)やソニーセミコンダクタソリューションズ(神奈川県厚木市)など半導体メーカー9社が今後10年で必要とする人材は計約4万3000人。JEITAは高等専門学校向けの出前授業を全国で展開するほか、政府に対し、優秀な外国人を採用するための所得税減免などを要望している。
半導体はパソコンやスマートフォンに加え、自動運転などの最先端技術にも欠かせない。国内メーカーが隆盛を極めた1980年代ごろは人材も豊富だったが、その後の事業縮小とともに技術者の海外流出も進んだ。リクルートは「半導体産業の裾野は広く、人材の受け皿となるマーケットも拡大している。エンジニア不足は深刻で、企業も働き方や採用戦略を見直すことが求められるのではないか」と指摘している。
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