「0.1点、大事にした」=体操元日本代表、冨田洋之さん―リレーコラム〔五輪〕
パリ五輪の体操男子団体総合決勝は序盤から中国が盤石な試合運びをして、日本が何とか食らい付くという流れだった。最後の最後まで本当に諦めずにやった結果、チーム力で勝ち取ったと思う。
勝因の一つは着地。日本が強化してきたことで、0.1点を大事にする姿勢が見えた。それが中国にプレッシャーを与えたんじゃないかな。最終種目の鉄棒を前に、2位の日本とは3.2点以上も離れていた。それで中国は少し油断したのかもしれない。鉄棒は出来があまり良くなく、着地も乱れて思ったような点数が出せず、日本に付け入る隙が生まれた。
日本は2種目目のあん馬で橋本大輝にミスが出て、流れに乗り切れなかった。それでもチームの雰囲気は落ちず、全員が支え合っていた。萱和磨はトップバッターで重圧がある中、自分の能力以上の演技を見せた。キャプテンらしさや成長ぶりを感じる。
私が出場した2004年アテネ五輪の団体決勝で、日本は望んだ通りの試合展開で勝てた。今回はミスや跳馬の点数の伸び悩みなどイレギュラーなことがある中、前を向き続けた。最後に3.2点差をひっくり返すなんて、団体ではなかなかない。
勝ちはしたけど、今後には危機感がある。中国は今回の負けでさらに強くなるだろうし、3位の米国は28年ロサンゼルス五輪に向けて力を入れてくるはず。英国も来年以降のルール変更への対応を既に始めているように見える。日本も新たに若い力を発掘していかないと、置いていかれてしまう。
パリはまだ個人種目が残っている。橋本は動きを見る限り予選より決勝の方が断然いい。団体決勝で少しミスがあったけど動きは悪くないので気にせず、個人総合決勝で爆発してほしい。
岡慎之助は緊張する場面でもニコニコして楽しんでいる姿が印象的。Eスコア(出来栄え点)の評価は本当に高いし、世界に通用する。今後も試合を楽しみながらやっていくのが一番。
◇
冨田 洋之さん(とみた・ひろゆき)順大体操部男子監督。04年アテネ五輪はエースとして日本の28年ぶり団体金メダルに貢献。05年世界選手権個人総合優勝。大学時代の橋本大輝を指導した。大阪府出身。43歳。 (時事)
[時事通信社]
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