けが乗り越え、挑んだ連覇=「同志」支えも、2回戦敗退―柔道・阿部詩選手〔五輪〕
柔道女子52キロ級、阿部詩選手(24)=パーク24=にとって、金メダルを獲得した東京五輪後は平たんな道のりではなかった。「同志」とも呼ぶ練習パートナーの森和輝さん(26)に支えられ、けがを乗り越え歩んだ3年間だったが、2回戦で敗退した。
森さんは、詩選手の兄一二三選手(26)と日体大柔道部の同期で、2019年から詩選手の練習パートナーを務める。いずれ指導者になる夢があり、「勝ち続ける選手の練習を間近で見るのは誰にもできない経験」と語る。
詩選手は東京五輪直後、痛めた両肩の手術に踏み切り、8カ月ほど畳を離れた。リハビリに毎回付き添った森さんの支えもあり、順調に回復した詩選手は22年、23年と世界選手権を連覇。だが、今度は腰痛に悩まされるようになった。
試合前にはたびたび不安も吐露した。「うまくいかないかも」。今年3月の国際大会前、弱音を吐く詩選手に森さんは「覚悟を決めろ」と迫った。痛む体を押して臨む試合、自分の組み手ができなくても、開き直ってやるしかない―。そう励まして送り出すと、結果はオール一本勝ち。「圧勝ですぐ試合を決めてきた」と森さんは笑う。
世界一になっても、詩選手の柔道に対する姿勢は謙虚だ。森さんの技術的なアドバイスも実戦で取り入れ、実を結ぶことも少なくないという。森さんは「それがやりがい。詩は貪欲にいろんなことを吸収したい子」と好奇心の旺盛さに目を見張る。
一方、詩選手は森さんへの信頼を隠さず、「自分の技や組み手、心を知り尽くしている。すごく仲の良い友達で、一緒に戦う同志」と語る。
2回戦では一本負けを喫し、涙で目を腫らしてしばらく畳を離れられなかった。万雷の「ウタ!」の掛け声の中、コーチに抱きかかえられるようにして試合場を後にした。
[時事通信社]
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