IT武器に復興推進=政府、デジタル改革加速―ウクライナ
【キーウ時事】ロシアの侵攻が続くウクライナの復興に向けた道筋は依然不透明だ。しかし、ウクライナのIT企業は高い潜在力を持ち、世界で活躍している。また、政府は行政サービスのデジタル化を加速させており、IT分野の強みが戦後復興の推進力になりそうだ。
ウクライナは旧ソ連時代の教育システムの名残で理数系の人材が豊富。欧州大陸初となるコンピューターは1950年代にキーウ(キエフ)の研究機関で開発された。IT分野の深い知識を持つ伝統を受け継いでいる。
デジタル技術の強さを示すのが、2020年に導入された政府公認のスマートフォンアプリ「Diia(ディーア)」。住民登録などさまざまな行政手続きやサービス申請をオンラインで行うことができ、国民の過半数、約2200万人がアクセスしている。
ウクライナのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を指揮するフェドロフ副首相兼デジタル転換相は「(国民の)出生時から年金受給申請時まで完全自動で電子サービスを提供するようにするのが目標だ」と説明する。ロシアの攻撃で被害を受けた建物やインフラの再建には人工知能(AI)を活用する計画だ。
一方、ウクライナのIT産業は、ソフトウエア開発の受託で発展を続けている。業界団体によると、国内のIT企業は2000社を超え、「ELEKS(エレクス)」など日本に進出した大手もある。23年の業界売上高はサービス輸出額の41%を占め、10年間で7倍超に拡大した。
ウクライナはまた、戦後の経済復興に関し、「国防関連が有望分野の一つ」(スビリデンコ第1副首相兼経済相)と位置付ける。先端ハイテク分野の軍事技術と民生技術の「境界線はなくなる」(フェドロフ氏)との見方がある中、AIなどITの重要性が一段と増す見通しだ。
ロシアの侵攻が続く中でも、日本企業では楽天グループが1月にキーウに拠点を開設。「多くのデジタル人材を抱えているのはウクライナの強み」(広報部)と投資に踏み切った。業界団体「リビウITクラスター」のベセロフスキー最高経営責任者(CEO)は「戦争終結後、外国からIT企業に多くの投資資金が流れ込む」と分析。IT人材や資源の争奪戦を予想している。
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