3年越しの思いも込め=羽根田、5大会目のパリ―カヌー・スラローム〔五輪〕
カヌー・スラローム界の期待の新星として、初めて五輪を経験したのは2008年北京大会だった。21歳だった当時を、男子カナディアンシングルの羽根田卓也選手(37)=ミキハウス=は「五つの輪っかを見ただけでそわそわしてしまった」と振り返る。それから16年。日本の第一人者として戦い続け、5大会目のパリを迎えた。
16年リオデジャネイロ五輪で一気に脚光を浴びた。日本勢初のメダル。端正なルックスも受け、メディアに引っ張りだこに。練習の妨げになりかねないと、周囲からは露出を控えるべきだとの声もあったが、それを拒んだ。「カヌーの素晴らしさを伝えたい」。自分にしか果たせない役割があると感じていた。
競技への注目度を保つためにも東京大会は重要だった。国内初の人工コース。2大会連続の表彰台を狙い練習を積んできたものの、本番直前に障害物の位置などが変更されてコースは別物に。ホームの「地の利」が消し飛んだ。それでも何とか進んだ決勝では、ゲート接触が響き10位に沈んだ。
五輪後、現役続行の決断を出すには少し時間がかかった。「集大成」として位置付けていた大会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で無観客。「自分が知っている五輪とは違った形になってしまった」。しこりを残したまま競技生活に幕は引けなかった。
当然、体力面の衰えは自覚している。かつてのような練習量はこなせない。「けがの恐れなどを考え、無意識にブレーキをかけてしまっていた」。そんな中、男子カヤックシングルのホープ、田中雄己(駿河台大)を練習パートナーに選んだ。田中が本数を重ねる姿を見ると「自分も、もう一本いけるかもしれない」と踏ん張れた。
アジアの最後の1枠に滑り込んで手に入れたパリ切符。「フルパワーの五輪を純粋に楽しみたい」と心待ちにした舞台に、3年越しの思いを込めた。 (時事)
[時事通信社]
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