中国、ASEANに外交攻勢=米からの引きはがし狙い
【ビエンチャン時事】中国の王毅共産党政治局員兼外相は25日、ラオスの首都ビエンチャンを訪問し、27日までの日程で東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議に出席する。東南アジアで中国と影響力を競う米国が、11月の大統領選を巡って混乱。習近平政権は、この機に乗じてASEAN諸国に外交攻勢を掛け、米国からの引きはがしを図る。
「中国とASEANのさらなる緊密な運命共同体を構築する」。中国外務省の毛寧副報道局長は23日、王氏の外遊についてこう説明した。
中国は昨年以降、ASEANの一角を占めるフィリピンと、南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁の領有権を巡って衝突を繰り返している。だが、それ以外のASEAN加盟国とは友好関係を保っているとアピールする考え。王氏は滞在中、各国外相と個別に会談し、経済など各分野での関係強化を表明する見通しだ。
中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた重要インフラ支援などで、東南アジアへの浸透を図ってきた。中国主導で同国からラオス、タイ、マレーシア、シンガポールを結ぶ壮大な鉄道計画を打ち出したほか、カンボジアとは軍事面の連携を強化。ミャンマーでは国軍と少数民族武装勢力の仲介に乗り出すなど、開発援助の枠を超えて地政学的影響力を強めている。
東南アジアはもともと、米中の一方の陣営に肩入れするのではなく、中立を志向する国が多かった。だが、シンガポールの「ISEASユソフ・イサーク研究所」が4月に公表したASEAN加盟10カ国対象の調査では、米中いずれかとの同調を余儀なくされた場合は「中国を選ぶ」と50.5%が回答。初めて「米国」を上回った。中国による経済面の恩恵に加え、米国の親イスラエル姿勢が、イスラム教徒の多い域内諸国の反発を買ったとの見方もある。
米国ではバイデン大統領が選挙戦撤退を表明し、政権のレームダック(死に体)化が進むとみられる。多国間の連携を軽視する姿勢が目立つトランプ前大統領の返り咲きも取り沙汰され、米国によるアジア関与の低下を予想する声が出ている。習政権にとっては、ASEANに「米国以外」の選択肢を提示する絶好の機会と映る。
[時事通信社]
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