中国EVで日系メーカー苦戦=日鉄が宝山と合弁解消
日本製鉄は、中国鉄鋼最大手・宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄との自動車向け鋼板の合弁事業を解消すると発表した。背景には、主な供給先となる日系自動車メーカーが、中国で電気自動車(EV)の市場拡大に乗り遅れたという事情がある。日鉄は合弁解消によって中国の鋼材生産能力を7割も削減する一方、成長が見込める米国やインドに資源を集中させる。
中国政府は近年、巨額の補助金などを通じて自国のEVメーカーを支援してきた。日本貿易振興機構(JETRO)によると、中国の2024年上半期(1~6月)の新車販売のうち、EVなどの「新エネルギー車(NEV)」は前年同期より3割以上多い約500万台に急速に伸び、全体の35%を占めた。
だが、日本勢はハイブリッド車やガソリン車を強みとしており、EV開発でやや出遅れている。中国市場の動向とミスマッチが生じ始めており、三菱自動車は昨秋、現地での車両生産から撤退を表明。日産自動車は今年6月に江蘇省の工場を閉鎖した。トヨタ自動車やホンダも大規模な人員削減に踏み切るなど、規模縮小を進めている。
日鉄と宝山の合弁会社は04年に設立され、今年8月に20年の期間満了を迎えるのを前に、両社が2年前から今後について議論してきた。日鉄は合弁解消の理由について「日系メーカーの現地生産に合わせて鋼材を供給するという当初の目的が達成されたため」と説明している。
日鉄は、日中国交正常化後の経済協力の柱として、宝山の高炉建設を支援するなど、中国の鉄鋼業の発展に尽力してきた。山崎豊子の小説「大地の子」は、この建設事業がモデルになっている。
ただ、日鉄は現在、EV普及に伴い高級鋼の需要増が見込める米国市場を取り込むため、鉄鋼大手USスチールの買収計画を進めている。日鉄はこれまで、日中経済の関係強化に主導的な役割を果たしてきたが、今回の合弁解消で米国シフトが鮮明になった形だ。
[時事通信社]
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