中期計画、2割策定せず=大手企業、変化に柔軟対応―時事通信調査
3~5年後の収益目標などを示す中期経営計画(中計)について、時事通信が国内主要企業を対象に実施したアンケート調査で、約2割が「策定していない」と回答した。計画期間の変更を含め見直しを検討する企業も1割に上った。為替の急激な変動や地政学リスクの高まりなど数年単位での経営環境の振れ幅が大きくなる中、より長期の目標に向け変化に柔軟に対応する狙いが透ける。
アンケートは6月に国内主要70社を対象に実施し、48社から回答を得た。「策定していない」と回答したのは楽天グループや野村ホールディングス、レゾナック・ホールディングス(旧昭和電工)など9社。「3年程度の積み上げ型の計画の発表は意味がない」(レゾナック)などとして、多くが10年前後の長期計画を立てている。
今年4月に中計の策定を取りやめた伊藤忠商事は、「経済情勢が計画の前提から乖離(かいり)し、期間中の変更を迫られることも想定される」と説明。味の素は「計画数値を精緻に作り込み過ぎることで、現場が疲弊したり、計画の意味が薄れたりする」として、中計を廃止した。
中計を策定している39社のうち、5社が「策定は続けるが、見直す予定がある」と回答。セブン&アイ・ホールディングスは「(経済情勢の)先行きを見通すことが困難」とした上で、「策定自体(の適否)と期間や運用方法、対外公表の有無などについて包括的に検討している」とコメント。資生堂は現状3年間とする期間について「業績状況などにより流動的」と説明しており、「インフレや地政学リスクなどに対応し、必要に応じて見直しながら運用する」と回答した。
一方、「策定している」と回答した会社では、「3年間で取り組む重点戦略と計画を明確にし、着実に実行するため」(東京海上日動火災保険)などの理由が多く挙がった。商船三井は35年度の「ありたい姿」を掲げた上で、その達成へ3~5年単位で計画を積み上げるやり方。こうした長期視点を持てるような工夫をしている会社も多い。
東芝は上場廃止後の今年5月に3年間の「東芝再興計画」を公表。「再び成長軌道に回帰させるためだ」と強調した。策定した計画の開示を巡っては京セラ、住友商事など35社は計画を公表している一方、キヤノンや三菱UFJモルガン・スタンレー証券など4社は非公表と対応が分かれた。
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