銀証連携ビジネス推進に影=法令順守強化との両立課題―三菱UFJ
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行・証券間の不正な情報共有は、これまで同社が推進してきた銀証連携ビジネスに大きな影を落とした。顧客からの信頼回復に向け、法令順守の強化と両立した事業立て直しが求められる。
「銀証連携と内部管理体制のバランスが崩れつつあることに、経営として対応できてこなかった」。MUFGの亀沢宏規社長は19日の記者会見で法令順守の意識がおろそかになっていたことを認めた。
違反があった「ファイアウオール規制」は、銀証の相互参入が解禁された1993年に導入された。銀行による「優越的地位の乱用」防止が目的だ。今回「乱用」は金融庁に認定されなかったが、証券業務で企業や自治体から起債の主幹事を外されるといった動きが続出。業績への影響額は現状で「数十億円ぐらい」(亀沢氏)と見込まれるなど、国内最大金融グループの信頼は揺らいでいる。
MUFGは2008年、リーマン・ショックで苦境に陥った米金融大手モルガン・スタンレーに出資。10年に証券2社を共同創設し、グループ内の銀証連携を強化してきた。2社合計の純営業収益(22年度)は独立系の野村証券に次ぐ国内2位に成長。昨夏には米モルガンとの新たな提携策をまとめ、国内1位奪取に目標を定めた。亀沢氏は「戦略自体は変わらない」と強調したが、実現のハードルは高まりそうだ。
今回の不正は、22年に行政処分を受けたSMBC日興証券と三井住友銀行間の事案に続くものだ。日本証券業協会の森田敏夫会長(野村証券出身)は「より明確なルールを示すことも必要では」と規制厳格化を訴える。
銀行界は、日本のような銀証間の規制がない米欧勢との公平な競争条件確保や、顧客ニーズ多様化を理由にさらなる規制緩和を求めてきた。全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀頭取)は「引き続き緩和を求める」とするが、逆風にさらされるのは不可避だ。
[時事通信社]
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