中朝結束に「すきま風」=北朝鮮労働者の帰国要求か
【北京時事】友好関係にある中国と北朝鮮の間に「すきま風」が吹いている。韓国の有力紙・東亜日報は今月、中国で働く北朝鮮労働者の一斉帰国を中国側が要求したと報じた。北朝鮮とロシアの接近にいら立ちを強める中国の習近平政権が、北朝鮮をけん制するため強硬姿勢を打ち出したとの観測も出ている。
中国には北朝鮮が海外に派遣している労働者の約9割、推定10万人が滞在しているとされ、金正恩政権の貴重な外貨獲得手段となっている。北朝鮮側は、一斉ではなく順次帰国させ、代わりに新たな人員を派遣することを提案。中国側は新規労働者の受け入れに消極的とみられ、中朝間の交渉は停滞しているという。
中国外務省の林剣副報道局長は報道を「根拠のない臆測だ」と一蹴。ただ、米政府系メディアも、北朝鮮が5月ごろから中国国内の公館向けに一定年齢以上の労働者らの帰国を急ぐよう指示していたと報じており、中朝間で労働者を巡るあつれきが生じているのは事実のようだ。
北朝鮮労働者を巡っては、そもそも国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議で2019年末までの本国送還を要請していた。これまで中国の曖昧な対応やコロナ禍でうやむやになってきた経緯がある。
中朝間の「異変」の兆候は他にもある。今月11日は中朝友好協力相互援助条約の締結から63年の記念日だった。中国共産党機関紙・人民日報は例年この日に「中朝友好」を祝う記事を掲載してきたが、今年はなかった。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞も同様だった。
同条約は、中朝の一方が第三国から攻撃を受けて戦争状態になった場合、もう一方が軍事支援することを定めたものだ。北朝鮮は先月、同様の規定を含む新条約をロシアと締結している。
習政権は、ロ朝接近によって中国の北朝鮮に対する影響力が相対的に低下する事態を警戒しているとされる。労働者の送還を進めることで、経済面で最大の後ろ盾である中国の存在を北朝鮮側に再認識させる狙いもありそうだ。
[時事通信社]
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