「幸せの国」、暗号資産に賭け=水力発電活用、経済苦境のブータン
「幸せの国」として知られるヒマラヤの王国ブータンが、暗号資産(仮想通貨)への投資に注力している。コロナ禍からの経済立て直しに苦慮する中、豊富な水資源から生まれる電力を生かしてマイニング(採掘)施設を整備。相場が乱高下する恐れもあるリスク資産に、国の未来を賭けている。
投資は2019年に始まったとされる。ブータン政府は詳細をほとんど明かしていないが、ある政府高官は経済の多角化のために投資していると認めた。首都ティンプーで家具販売会社を営む男性(42)は「公にはなっていないが知っていた」と話した。
米経済誌フォーブスは23年、衛星画像などを基に、政府が運営するマイニング拠点とみられる4カ所の存在を報じた。ブータン経済に詳しいインドのシンクタンク「オブザーバー研究財団」の研究員によれば、施設の多くはインドが建設に協力した水力発電所の近くに整備。マイニングにはコンピューターによる膨大な計算処理が必要なため、発電所から生み出された安価な電力を活用しているようだ。
世界銀行などによれば、政府は21年7月~23年6月の2会計年度にマイニング事業に計約5億3900万ドル(約850億円)を投じた。この額は年間の国内総生産(GDP)の約2割に相当し、大半は中国からの機器購入に充てたとされる。
マイニングの対象は大半がビットコイン(BTC)だ。政府は23年度、物価高対策や離職防止を目的に、全公務員の月額最低給与を5割引き上げた。この原資の一部は、政府が保有する投資会社がBTCの売却で得た利益で賄われると報じられている。
投資会社は外国企業と提携し、新施設を整備。マイニング能力を現在の100メガワットから25年中に600メガワットまで増強する計画だ。先の研究員は「安全な賭けかどうかは結果を待つしかない」と述べるにとどめた。
[時事通信社]
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