華麗に欺くフェイクセット=石川が持ち込み、自然に実践―バレーボール男子
昨秋に行われたバレーボール男子のパリ五輪予選、日本―トルコの第3セット中盤だった。相手からの緩い返球をセッター関田誠大(ジェイテクト)が上げると、高橋藍(サントリー)が後衛からスパイクを打ちにいく。と思いきや、空中で体をひねって右側にトス。相手ブロックは高橋藍につられ、西田有志(パナソニック)が豪快にたたき込んだ。
スパイクを打つと見せかけてトスに切り替えるプレーは「フェイクセット」と呼ばれる。セッターは2本目をトスにするのが基本で、流れの中で1本目をアタックライン付近に上げると、体勢が整う。1試合に1回あるかないかのプレーだが、華麗な連係技だけあって高橋藍は「確実に盛り上がり、会場の雰囲気をつくれるプレー」と手応えを口にする。
フェイクセットを日本に持ち込んだのは石川祐希(ペルージャ)だ。かつてイタリア1部リーグで同僚だったフランス代表のヌガペトを手本に習得。高橋藍らは石川をまねしてできるようになった。石川によると「チームで『やっていこう』みたいな話はなかった」そうで、自然に試合でも実践し始めた。
目的は相手ブロッカーを欺くこと。「関田選手が取ったボールを打つことを一番に考えながら、ブロックが来たらトスに変える」と高橋藍。今年のネーションズリーグでは、石川が2本目で強烈なバックアタックを決めるシーンがたびたび見られた。打ってくるのか、フェイクセットなのか。相手を惑わすことで、パリ五輪での52年ぶりのメダルに近づく。
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