生体に近い小腸組織作製=幹細胞から、創薬など応用期待―京大
ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)から、多層構造を持った小腸の組織を初めて作製したと、京都大などの研究チームが12日、発表した。生体内の小腸組織に近く、疾患の解明や治療法開発などに役立つと期待される。論文は米科学誌セル・ステムセル電子版に掲載された。
ヒトの小腸は粘液層や上皮層、間質層が重なっている。これまでiPS細胞やES細胞から作製した小腸は上皮細胞のみで、粘液層や間質層はなかった。
京都大iPS細胞研究所の高山和雄講師らは、胎児期の腸では動脈がつながっており、血管から染み出た体液の流れ「間質流」が腸管を構成する細胞に栄養を供給していることに着目。深さ0.6ミリ、幅1ミリの流路の上にiPS細胞などから作った細胞を置き、間質流にさらしながら培養したところ、20日後に微小サイズの小腸組織が形成された。上皮細胞だけでなく、粘液層や間質層もある多層構造になっていることを確認した。
作製された小腸組織は、薬物投与やウイルス感染に対し生体内の組織と同様に反応した。粘膜層があることから、粘膜に障害が生じるO157やノロウイルス感染症などの研究に応用が広がることが期待できるという。
高山講師は「小腸がつくられる際に間質流が大きな役割を果たすことが分かった。これを活用し、小腸の病気の解明や治療薬の開発を進めたい」と話している。
[時事通信社]
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