「速いだけでは駄目」=頭使った投球術説く―故若生智男さん・プロ野球
「速い球だけでは駄目。いかにいい球をコーナーに投げ分けるか」。6月3日に87歳で亡くなった元プロ野球投手の若生智男さんは、生涯唱えた投球術があった。
王貞治と長嶋茂雄、ONを擁した巨人の全盛期。阪神に在籍していた若生さんは伝統の一戦で王の内角を突いて三振を奪った際、自身の頭を指さし「投手はここや」と満足そうに笑っていたと、現役時代を知る元プロ野球記者は言う。
当時の日本人選手の中では大柄な体格で、140キロ台後半のストレートを持っていながら決して速球だけに頼ることはなかった。緩い球を効果的に使い、コーナーに投げ分ける投球で通算121勝を積み上げた。
引退後は阪神、ロッテなどでコーチを務め、アマチュア野球に指導の場を移してからも直球だけに頼らない考え方は変わらなかった。千葉県の中学、高校の野球発展に尽力した若生さんは、投手の「酷使」による肩の故障も懸念していたという。
今や投手の球速は若生さんの活躍した1960年代から大幅に向上した。その一方で、肩や肘の故障で選手生命を絶たれるケースも少なくない。高校時代に若生さんの指導を受けた元球児は「消耗品だから」と肩を大切にするように言われたと振り返る。成長途中の中学生、高校生がやみくもに速球を追い求め、そのスピードに頼ってしまうことの弊害を若生さんは気付いていたのかもしれない。
前出の元プロ野球記者は、若生さんの信念を生涯通して何度も聞いていた。「緩い球と頭を使って投げるのがピッチャー。ピッチャーは速い球だけじゃ駄目なんだ」と。
弟の正広さんは宮城・東北高監督などを歴任。ダルビッシュ有投手(現米大リーグ、パドレス)の恩師として知られるが、2021年に亡くなっている。
[時事通信社]
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