大手行、地銀が「半導体シフト」=融資拡大へ専門チームや他行連携―中小企業参入も後押し
日本各地で半導体工場の新設計画が相次ぐ中、大手銀行や地方銀行が関連産業への融資を拡大するため「半導体シフト」を進めている。人工知能(AI)の普及などを背景に、関連産業の資金需要が高まるとみて、専門チーム設置や他行との域内連携で体制を整備。中小企業の参入や設備投資も後押しする。
三菱UFJ銀行は4月、「半導体バリューチェーン推進室」を新設した。個別産業に特化した部署は同行初という。知見を持つ推進室メンバーが各地の支店担当者らと共に取引先を訪問。ニーズに細かに応じる体制を整えた。中野慶三郎室長は「融資に限らず半導体産業のさまざまな課題解決を目指す」と語る。
国内では半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に進出。次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京)は北海道で工場建設を進めるなど投資が活発化している。関連企業参入や生産能力増強に伴う資金需要への期待は高い。
中野氏は「大小を問わず半導体産業を支える企業を支援し、サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化に貢献する」と強調する。推進室は、納入先の大規模な設備投資に付いていけない中小下請けへの支援策を検討。町づくりや人材育成にも取り組む。
三井住友銀行も今年度、本部に半導体専門チームを設置。世界市場や研究開発などの情報を収集し、九州の営業現場に提供するなど行内連携を強化している。
福岡銀行や肥後銀行など九州・沖縄の地銀11行は1月、地域への半導体産業集積を目指す連携協定を締結した。共同での投融資やファンド組成のほか、合同商談会などによる地場企業の参入支援も進める方針で、5月には山口銀行と北九州銀行も加わった。
九州での半導体投資の経済波及効果は「10年間で20.1兆円」(九州経済調査協会)とされる。住宅や商業施設、物流に至るまで産業の裾野は広く、「単独での対応は難しい」(福岡銀)と連携に踏み切った。
SBIホールディングスと台湾の受託製造大手、力晶積成電子製造(PSMC)が工場建設を計画する東北でも七十七銀行や仙台銀行などが専門チームを設置。融資拡大の好機に備えている。
[時事通信社]
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