年金、33年後に2割目減り=現役収入の5割は維持―低年金対策検討へ・厚労省財政検証
厚生労働省は3日、公的年金の給付水準見通しに関する5年に1度の財政検証結果を公表した。現役世代の手取り収入に対する年金の給付水準(所得代替率)は、2024年度に61.2%なのに対し、中長期的に実質経済成長率が0.1%減で続くなどした場合、33年後の57年度には50.4%まで低下。年金水準は現在より2割弱目減りする見通しとなった。
財政検証の結果は、同省が3日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会に示した。所得代替率は法律で定めた50%を上回り、制度の持続性は確認された。ただ、試算は一定の経済規模や外国人を含めた人口保持を前提にしており、想定を下回れば、年金水準はさらに低下する。
年金水準が低下するのは、将来世代の給付を確保する「マクロ経済スライド」で支給額の伸びを抑制しているためだ。老後の貧困化リスクにつながることから、同省は厚生年金の適用拡大など低年金対策の検討を本格化し、来年の通常国会に関連法改正案提出を目指す。年金部会の委員からは、低年金対策として「非正規やパート労働者に対する厚生年金の適用拡大を最優先すべきだ」との意見が相次いだ。
試算は約半世紀後の70年に、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」が1.36であることが前提。過去の実績値を基に年16万人超の外国人の入国超過が40年まで続くという条件も付けた。
物価や賃金などの経済条件は4通りで実施。中長期の実質経済成長率が0.7%減のケースでは59年度に国民年金の積立金が枯渇し、所得代替率は30%台に低下。一方、経済成長率が1%以上と見込む2ケースでは56.9~57.6%で下げ止まる。
同省は会社員の夫と専業主婦の妻の組み合わせによるモデル世帯の年金月額も試算した。基礎年金と厚生年金の合計月額は24年度が22万6000円。これに対し、経済成長率を0.1%減とした「現状投影型」では、57年度に計月21万1000円(現在の物価水準ベース)になる。現役世代の手取り収入の伸びやマクロ経済スライドの影響で目減りする。
[時事通信社]
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