新組織、新装備で任務多様化=「人手不足」高まる懸念―若者確保に「改革」も・自衛隊70年
自衛隊は1日で発足から70年を迎えた。「かつてなく厳しい安全保障環境」が叫ばれ、予算も膨らむ中、南西諸島の防衛体制強化、宇宙・サイバーといった新領域への対応など任務は拡大し続けている。ただ人材確保は苦戦しており、幹部は「今後は人手不足が最大の敵」と話す。
防衛省は今年度中に、陸海空各自衛隊を一元的に指揮する新組織「統合作戦司令部」を240人体制で発足させる。沖縄の陸自第15旅団を師団に格上げするなど、中国の進出を念頭に南西シフトも加速。陸自も加わる海上輸送部隊の創設や、空自宇宙作戦群による衛星運用、サイバー防衛隊の強化など新分野への対応も目白押しだ。
国際共同訓練の増加や、北朝鮮のミサイルに備えた部隊展開の常態化など、任務は多忙を極める。自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は「災害派遣と海外邦人退避など、同時多発の対応力が求められている」と話す。
一方で人手不足は深刻だ。防衛力の抜本強化を掲げながらも定数は変わらず、そもそも定員割れの状態が続く。自衛隊幹部は「配置転換でやりくりするしかないが、基地縮小には地元の反発もある。補完となる予備自衛官も不足し、一筋縄ではいかない」と頭を悩ませる。
中でも深刻なのが新隊員の採用難。少子化で若者人口は減り、相次いだセクハラ、パワハラ事案でイメージが悪化した。防衛省の担当者は「警察や消防との取り合いだが、分が悪い」とこぼす。
このため若者を意識した改善も始まっている。防衛省はハラスメント根絶を掲げ、手付かずだった隊舎などの老朽施設を改修。隊舎の個室化や洗浄便座トイレの導入も進め、海自護衛艦では衛星通信システム「スターリンク」を使用したネット環境整備の試行も始まった。
任務の高度化に対応するため、サイバーなどの専門人材は一般採用と別に外部からも募集。人手不足を技術で補う「省人化」も進める。より少人数で運航可能な護衛艦の導入や、警戒監視への無人機活用などで、新任務に回す余力を生み出す。
ある幹部は「自衛隊は人で成り立つ組織。必要な規律と練度を維持しつつ、どう時代の変化に対応するか。これからが組織運営のヤマ場だ」と話した。
[時事通信社]
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