中国、「国家安全」へ監視徹底=入国時スマホ検査に懸念―改正反スパイ法施行1年
【北京時事】中国でスパイ摘発を強化する改正反スパイ法が施行されてから1日で1年。習近平政権は「国家安全」重視の姿勢を強め、外部の「危害」や国内の機密流出阻止に向けた監視を徹底している。同日から、当局者にスマートフォンやパソコンの検査権限を与える新規則も施行。あらゆる分野が「国家安全」につながり得る中、当局による恣意(しい)的な運用への懸念が一段と高まっている。
「ゼロリスクに近づけたい」。北京に拠点を持つ外資系コンサルティング会社は、新規則の施行に先立ち、中国への出張時に会社のパソコンやスマホの携行を原則禁じ、現地オフィスで貸し出す運用を始めた。「不便な面もあるが、社内の情報を守るための措置だ」と説明した。
新規則は、反スパイ法などの細則規定として4月に発表された。個人や組織が所有する電子機器について、国家安全当局がメッセージや写真、動画を含むデータを調べることができると明示。従来も検査は可能だったとみられるが、明確化されたことで入国時の不安が広がった。
これに対し、中国側は「一部の海外反中敵対勢力がセンセーショナルな言論を悪意を持って捏造(ねつぞう)している」と反発。検査対象は「(国家安全に危害を加える)反スパイ活動に関連した個人と組織であり、『一般入国者』ではない」と主張し、懸念払拭を図っている。
ただ、習政権の唱える「国家安全」は外交・国防分野の安全保障に加え、政権の維持や社会の安定、食料、生態環境の保護など幅広い概念を指す。そのため、何をスパイ行為と認定するかは当局の解釈次第とされ、外国人らの間で不安が広がる要因となっている。
スパイ摘発を担う国家安全省は、国内への宣伝・教育にも力を入れている。改正法施行後に開設したSNSの公式アカウントでは、中国が摘発した米英などのスパイ事案に関し、接近の経緯や手口を詳報。外国人と関わる人員や海外で暮らす留学生らへの注意喚起を強めているほか、国民にも積極的な通報を奨励している。
[時事通信社]
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