EU、政策滞る恐れ=強権ハンガリーが議長国に
【ベルリン時事】欧州連合(EU)の議長国が7月1日、ベルギーからハンガリーに引き継がれる。任期は半年。加盟国の閣僚で構成する理事会の議事を円滑に進める輪番制の役割だが、強権的なオルバン政権が「自国の意に沿うよう、権限を不当に利用するのでは」(欧州メディア)との懸念がEU内に広がっている。ハンガリーが反対するウクライナ加盟交渉や気候変動対策などの停滞が予想されている。
議長国就任に際し掲げた標語は「欧州を再び偉大に」。自国最優先を打ち出すトランプ前米大統領の常とう句「米国を再び偉大に」をそのまま転用した。オルバン首相は、ウクライナに侵攻を続けるロシアに融和的で、EUの意思決定をことごとく乱してきた。
ハンガリーは、議長国の重点課題としてバルカン諸国との加盟交渉加速を挙げつつ、ウクライナとの交渉を進める考えは「全くない」(ボーカEU相)と公言。これを見越した他の加盟国は、異例の速さでウクライナ交渉入りを進め、6月25日に交渉開始にこぎ着けた。またEUが対中強硬に傾く中、シーヤールトー外相は「中国と協力を深めた方が欧州は繁栄する」と主張。議長国として関係改善に努めると表明した。
オルバン氏は、6月の欧州議会選で伸長した極右勢力と反移民や環境規制の緩和などで連携し、EU主流派に対抗したい考え。もっとも、ハンガリー与党は議席を減らし、求心力低下もささやかれている。EUの「顔」ともいえる議長国の成果を政権浮揚につなげたい思惑もあり、過度な摩擦を避けるとの見方もある。
議長国の任務をハンガリーに引き継ぐベルギーのデクロー首相は28日、記者からオルバン氏への助言を問われて、こう答えた。「議長国はEUの長ではなく、むしろ妥協が必要だ。人生で一度は経験すべき興味深い立場だ。ぜひお勧めしたい」。
[時事通信社]
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