極右が支持拡大、公約に懸念=30日に第1回投票―仏総選挙
【パリ時事】フランス国民議会(下院、定数577)選挙の第1回投票が30日行われる。欧州連合(EU)欧州議会選に勝利した極右野党・国民連合(RN)が支持を広げ、総選挙でも第1党に躍り出る勢いだ。ただ、移民排斥や自国第一主義を掲げたマニフェスト(政権公約)は物議を醸し、右派からも「国家の分断を助長する」と懸念の声が上がっている。
下院選は2回投票制。7月7日の決選投票でRNの獲得議席が過半数に達すれば、極右内閣と中道のマクロン大統領が統治を分担する「コアビタシオン(共存政権)」が誕生する公算が大きい。
だが、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を巡り、仏部隊の派兵も辞さないマクロン氏と、武器供与の制限を唱え、親ロシア姿勢が見え隠れするRNは水と油の関係。タッグを組んでも意見対立は必至で、支援に混乱を来しかねない。
共存政権は戦後フランスの第5共和制下で過去3度ある。憲法で「軍隊の長」と定められた大統領が外交・防衛を、内閣が内政を主に担当する取り決めだった。これに対し、RNを束ねるルペン前党首は、「軍隊の長」は「名誉上の称号だ」と主張。選挙に勝利した暁には極右内閣が国防政策を担う意向を示し、アタル首相から「憲法無視だ」と猛反発を受けた。
RNはほかに公約として、生活必需品の大幅減税や移民の流入抑制、不法移民向け医療費補助の撤廃、仏生まれの外国人への国籍付与の廃止、防衛・機密情報に携わる公職への二重国籍者の登用禁止などを表明。一部は「自由・平等・友愛」をうたう憲法への抵触も指摘される。
中道右派・共和党のベルトラン元保健相は「RNが国家の分断を深める」と危機感を強調。「それを望まない人々は集結しよう」と、反極右の大同団結を呼び掛けた。
もっとも、原理原則を振りかざしての極右批判は空回りの感が否めない。大半の有権者が選挙で重視しているのは、生活水準の低下や移民増加、治安悪化といった身近で切実な問題だからだ。
物価高のさなか、定年延長の年金改革を断行したマクロン政権への幻滅から、RNは労働者らの不満を吸収。政策の実現可能性に疑問符が付きまとうものの、世論調査での支持率は35~37%に上昇し、欧州議会選での得票率の31%を上回る。下院の過半数に届くかは不透明だが、支持率約20%の与党連合を大きく引き離している。
[時事通信社]
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