二度と出たくなかった五輪=被災地への思いも―トランポリンの森ひかる・近づく祭典
トランポリン女子で2019年、22年世界選手権個人を制した森ひかる(24)=TOKIOインカラミ=は、「こう見えて意外と完璧主義」と自己分析する。
3年前の東京五輪は、それが悪い方向に出たのかもしれない。日本勢初のメダルが期待された重圧にも苦しみ、大会前から不調に陥った。予選で2度とも失敗し、決勝にも進めず号泣。「完璧を求めて頑張り過ぎ、気がついた時は(限界を)オーバーしてしまう」。そして思った。「二度と五輪には出たくない」
その後の道のりは平たんではなかった。指導者や練習環境が充実しているとは言えない競技。引退も考えた。それでも、金沢学院大を卒業後は企業にメールを送り、自分を売り込んで所属契約をつかんだ。
近年は英国や中国のライバルが力を付け、連覇を狙った昨年の世界選手権は準決勝敗退。「何かを変えなければ」。五輪イヤーは、昨年まで拠点にしていた東京から再び石川に戻り、かつての恩師だった日本体操協会の丸山章子強化本部長に師事。「やっぱり五輪に出たい」。最近、またそう思えるようになった。
元日に能登半島地震が起きた際は東京におり、間もなく練習のため石川に向かった。一時的に練習場が使えなくなった上、新居探しが思うように進まないなど私生活にも影響が出た。被害が大きかった輪島市は、合宿したこともある思い出の場所。練習で使った体育館は、天井が落ちてしまったという。「被災して今も不自由な生活をされている方がいらっしゃると思うし、少しでも頑張っている姿を見せて勇気づけることができたら」
1枠しかないパリ五輪日本代表の座を勝ち取った直後、森は「頑張り過ぎず、頑張りたい」と言った。2度目の晴れ舞台は、少し肩の力を抜いて臨もうとしている。3年前の絶望を乗り越えた末に、たどり着いた境地だ。
[時事通信社]
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