「人生で最も楽しい一時期」=留学時代の陛下、当時の知人ら証言
天皇、皇后両陛下は28日、かつて留学していたオックスフォード大を再訪される。天皇陛下は著書「テムズとともに」に「人生にとって最も楽しい一時期」と書いた。当時を知る人に聞いた。
◇研究「資料集めが大変」
陛下は1983年6月に渡英し、同大のカレッジ(学寮)の一つ、マートンカレッジで寮生活を始めた。テムズ川の交通史を研究し、85年10月まで滞在。「洗濯機に洗濯物を詰め過ぎ、辺りを泡だらけにした」(同著)といった失敗もあった。
日銀審議委員の高田創さん(65)は、日本興業銀行(当時)の行員として同大に留学していた85年2月、パブ「パーチ」で陛下と出会った。どんな勉強をしているか質問されて会話が弾み、陛下は自身の研究について「資料を集めるのが大変なんだ」と明かしたという。
高田さんは「(陛下は)原典にきちんと当たり、地道に研究されていた」と話す。日本の芸能人の話題でも盛り上がったという。
同年4月には他の日本人留学生と共にテニスを楽しんだ。約2カ月ぶりに会った陛下からは「高田さん、ひげをそったんですね」と声を掛けられた。高田さんは陛下のテニスの腕前に驚くとともに「気さくな方だと感じた」と振り返る。
◇「部屋ごと持って帰りたい」
時事通信ロンドン特派員として、留学時代の陛下を取材した八牧浩行さん(76)は、同大を「陛下の青春のきらめきが詰まった場所」と強調する。
同大では、普通の20代と同じように自由と青春を謳歌(おうか)する陛下がいた。ジーパン姿でディスコに入ろうとして断られた経験もし、寮の部屋には歌手の柏原芳恵さんや、俳優のブルック・シールズさんのポスターが貼ってあった。日英の大学の違いについて「日本では女子学生はあまり発言しませんが、こちらでは論破されます」と目を輝かせていた。
「寮の部屋ごと、記念に持って帰りたい」。85年10月、留学を終えた陛下の感想を側近を通じて聞いた。「欧州で生活すると、世界をグローバルかつ多角的に見渡す目が養われる」と八牧さん。「英国で世界中の人々と交流し、協調と平和友好の精神を学ばれた。留学は成功だった」と今も感じている。
[時事通信社]
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