現場跡地に献花台初設置=地元2町会「怖さ今も」―松本サリン30年・長野
オウム真理教による松本サリン事件で、亡くなった1人が住んでいた長野県松本市の明治生命寮跡地の公園に、地元の田町、新田町の2町会が26日、献花台を設置した。町会による献花台設置は事件後初めて。
田町町会によると、昨年も公園に花束が置かれていたことから設置を決めた。同町会長の吉見隆男さん(71)は「今までは何もしてこなかったが、30年の節目で提案があり、設置することにした」と話す。
近くに住んでいた第1通報者で被害者の河野義行さん(74)が当初容疑者扱いされたこともあり、町会内には事件のことを話題にしにくい雰囲気が残る。吉見さんは「事件があったのは分かっているけれど、口にはしない」と声を落とした。
「ガス漏れがあったみたい」。新田町町会長の犬飼博さん(71)は発生後、消防車やガス会社の車が集まった現場を見に行った。「自分には健康被害はなかったが、怖さは今も残る」と話した。
教団が猛毒のサリンを発生させた駐車場は今も残る一方、周辺には新しい住宅も立ち並ぶ。犬飼さんは「追悼の気持ちがある人に献花してもらいたい」と語った。献花台は28日夕方まで設置される。
献花台の前には26日午前、設置を提案した後藤芳孝さん(76)が訪れ、「町会内にも事件を知らない人が多くなっている。『忘れてはいけない』という思いで慰霊したい」と話した。自宅で育てたスイートピーなどを供えた男性(79)は、「いくら年月がたっても忘れたことはない。二度と起こさないために知ることが大切だ」と語った。
[時事通信社]
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