英総選挙、移民政策が争点=保守党政権に不信感
【ロンドン時事】来月4日の英総選挙では、急増する移民への対応が争点の一つとなっている。移民問題は欧州連合(EU)離脱の主な要因ともなったが、その後もウクライナからの難民受け入れなどが重なり、正規手続きでの移民が急増。フランスから小型ボートで密入国する亡命希望者も後を絶たず、対応が追い付かない状況だ。削減を約束してきた政府に対し、有権者は不信感を募らせている。
国民統計局によると、2023年の英国への移住者数から国外へ出た移住者数を差し引いた純移民は、68万5000人。過去最多だった22年の76万4000人は下回ったものの、高水準にとどまった。
政府は昨年、最低給与水準の引き上げなどビザ(査証)発給要件の強化を発表。スナク首相は20日、BBC放送の番組で「今年に入り、ビザ発給数は約30%減少した」と成果を強調し、純移民は今後12カ月で半減するとの見込みを示した。選挙公約では削減に向け、移民受け入れの上限設定を盛り込んだ。ただ、実現可能性に懐疑的な見方が多い。
不法入国した移民への対応も不透明だ。政府は密入国者のアフリカ中部ルワンダへの強制移送を定めた法律を成立させたが、英最高裁は非人道的な扱いを禁じる「欧州人権条約」に違反すると判断。スナク首相は同条約からの離脱も辞さない考えだが、有権者からは批判の声が大きい。
「完全にコントロールを失っている」。労働党のスターマー党首は同番組で、政府の移民政策を批判した。労働党は移民削減の目標を掲げず、海外からの労働者が置かれている低賃金などの劣悪な環境を取り締まる方針を示す。政府のルワンダ移送計画も廃止を主張し、それで浮いた膨大な費用を投じて、各地の国境警備隊を統括し、入国管理を一元的に取り仕切る「国境警備司令部」を創設する考えだ。
また、現在10万人を超える人が難民申請できずに窮屈な住宅や劣悪なホテルに追いやられていることも問題になっている。労働党は政府の対応を批判しているが、労働党が政権を取れば、自らの課題として重くのしかかることになりそうだ。
[時事通信社]
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