人口減少下も1%超の成長実現=賃上げと設備投資、中小・地方へ―30年度目標に新生計画・骨太原案
政府は11日の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)で、6月中の閣議決定を目指す、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の原案を示した。人口減少が本格化する2030年代以降も、社会保障の持続性を確保するため、実質GDP(国内総生産)で1%を安定的に上回る成長を実現すると明記。大企業を中心とした高水準の賃上げと設備投資を中小・地方に広げ生産性を高める。
原案では、デフレの完全脱却を実現させ、「二度と戻らせない」と強調。30年度までを経済構造変革の「ラストチャンス」と位置付け、賃上げの定着と戦略的な投資を柱とする6カ年の「経済・財政新生計画」の実行で「成長型の新たな経済ステージ」に移行させる目標を掲げた。特に当初3年間を改革の集中取組期間と定義した。
岸田首相は会議で「新生計画に基づき、国民が豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会を実現していく」と強調した。
賃上げの定着に向け、教育訓練給付の拡充を通じた全世代のリスキリング(学び直し)や男女間賃金格差の是正などを推進。中小企業による人件費の価格転嫁を適切に進めるため、発注元の優越的地位乱用による不公正な取引を取り締まる下請法改正の検討を進める方針を示した。
戦略的な投資の実行に向けては、人手不足に対応するための省力化投資を集中的に支援するほか、人工知能(AI)の普及を踏まえて次世代半導体の量産などに向けた法整備の検討を進める。
原案では25年度に国と地方の基礎的財政収支(PB)を黒字化する目標を維持し、「後戻りさせない」と明記。先進国で最悪水準の国の債務残高対GDP比の安定的引き下げに取り組む考えも強調した。骨太方針に25年度のPB目標を明示するのは21年以来となる。
内閣府によると、日本の潜在成長率は2000年代に入ってからは1%を下回って推移している。原案では、1%を上回る安定成長を確保し、2%の物価安定目標の実現が見通せれば、40年ごろには名目GDP1000兆円程度の達成が「視野に入る」との見通しも示した。
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