FTA再開へ議論前進=経済停滞の中国と思惑一致―日中韓首脳会談
日中韓3カ国は27日の首脳会談(サミット)で、自由貿易協定(FTA)の交渉再開に向けた議論を加速することで合意した。2013年に始まった交渉は、関係悪化により19年を最後にこう着状態となっていた。しかし、米国との対立激化などで経済が停滞する中国と、自由貿易を推進したい日本との思惑が一致し、議論が前進した。
国際通貨基金(IMF)によると、3カ国の国内総生産(GDP)の合計は24兆4000億ドル(約3800兆円)で、世界全体の2割に上る。3カ国首脳の共同宣言は、経済協力を進め、域内貿易を拡大させることが「地域および世界経済の繁栄および安定にとって重要な役割を果たす」と強調した。
日中韓は、東南アジア諸国などとの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に参加。関税撤廃・削減などで投資や貿易の活発化を目指している。ただ、日本政府内では、「日中韓でRCEPを上回る高いレベルでの議論を進めないといけない」(関係者)と、さらなる貿易自由化に向け、FTA交渉再開の必要性を指摘する声も出ていた。
巨額の補助金によって電気自動車(EV)などの過剰生産を続ける中国に対し、米国は批判を強めている。バイデン米大統領が対中制裁関税を引き上げる方針を決定するなど、米中対立は激化。自国経済の停滞に苦しむ中国にとって、日韓との連携強化の重要性が増していた。
ただ、東京電力福島第1原発の処理水放出を受けた中国の日本産水産物の禁輸措置を巡っては、岸田文雄首相が26日の日中首脳会談で即時撤廃を求めたものの、議論は平行線をたどった。中国は貿易相手国に圧力をかける「経済的威圧」の姿勢を強めており、FTA交渉の先行きは依然として不透明さが拭えない。
[時事通信社]
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