岸田首相、規正法も「後手」続き=政活費見直し、党内不満も
自民党の派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、岸田文雄首相の「後手」ぶりが目立つ。世論の逆風が収まらず、後ろ向きだった政治資金パーティー券購入者の公開基準引き下げや、使途公開が不要な政策活動費の見直しを次々と追認。十分な議論もなく譲歩を重ねる首相に、自民内で一層不満が募っている。
「週内に与党案をまとめてほしい」。首相は7日、国会内の党国対委員長室に自ら出向き、衆参両院の国対幹部にこう指示した。その後も、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長らと相次ぎ会談。規正法改正の地ならしに動き回った。
首相は外国訪問から帰国直後の6日、党内で規正法改正に携わる実務者を首相公邸に呼び、政策活動費の使途公開を検討するよう指示。大型連休中にはパーティー収入の透明性向上にもかじを切った。いずれも、自民が当初まとめた独自案では「検討項目」とされ、事実上先送りになった内容だ。
方針転換を迫られたのは、4月の衆院3補欠選挙で「全敗」するなど、裏金事件への批判に収束の兆しが見えないためだ。党若手は連休中、地元有権者から「『裏金事件の党内処分が軽すぎる』と迫られた」と明かす。
規正法改正を巡る自民の消極的な姿勢を、公明党は厳しく批判。「泥船に乗ってはいられない」(党幹部)と与党協議の決裂も辞さない構えを見せていた。
今国会中の規正法改正に「全力を挙げる」と明言した首相が、なりふり構わず妥協に転じた格好だが、政策活動費の使途公開について、自民内は「見直しは無理だ」(党幹部)と難色を示す向きが多い。党ベテランは「中途半端な対応だ」と場当たり的な判断を疑問視する。
内閣支持率の低迷に苦しむ首相の政権基盤は、さらに不安定化しそうだ。6日の実務者への指示に対し、党内は「聞いていない」(国対筋)と反発。首相が7日に党国対を訪れたのは、これをなだめる目的もあった。
茂木氏らが規正法改正の環境整備に動く気配もない。「執行部が反目し合っている」。政府関係者はこう指摘。政権内のぎくしゃくした雰囲気は隠しようもない。
[時事通信社]
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