欧州、「脱米国依存」を模索=対ロシア防衛、団結課題―米大統領選
【ロンドン、パリ、ブリュッセル、ベルリン時事】11月の米大統領選まで5日で半年。欧州各国は、同盟軽視の傾向が強いトランプ前大統領が返り咲いた場合に備え、安全保障の「脱米国依存」を模索している。ただロシアの直接的な脅威が迫る中東欧と、米国との距離感が異なる英仏などの団結に課題もある。
4月8日、迷彩服を着たドイツ軍兵士約20人が、バルト3国リトアニアの空港に降り立ち、同国高官に出迎えられた。北大西洋条約機構(NATO)の対ロ防衛の最前線であるリトアニアに、独軍が常駐を予定する約4800人の旅団の先遣隊だ。独軍旅団が国外に常駐するのは初めて。
NATO内では米軍頼みの体制を見直す動きが広がっており、とりわけ米国の核の傘に守られているドイツの焦燥感は大きい。トランプ氏の再登板が実現しなくても、同氏に近い共和党保守強硬派の反対でウクライナ支援が中断するなど、既に米欧関係は盤石とは言えない。現在は米国が担うウクライナ支援国の調整役をNATOに移す案も検討されている。
マクロン仏大統領は4月25日、パリで演説し「欧州が米国の属国集団ではないと証明できる」ことが重要だと訴えた。フランスには対米自主独立を掲げる「ドゴール主義」の伝統が今も息づいている。一方で、対ロ防衛の要となるポーランドは米国との安保協力を深めたい考えだ。NATOはロシアに融和的なハンガリーも抱えており、各国の思惑は入り乱れている。
米国と「特別な関係」にある英国も、欧州としての結束を呼び掛けている。スナク英首相は4月24日の訪独時に「欧州に身を切る覚悟がないなら、米国に負担を期待することはできない」と強調した。ただ内政では政権交代の可能性も取り沙汰され、指導力不足は否めない。かつて欧州の盟主としてトランプ氏と対峙(たいじ)したメルケル前独首相のようなリーダーの不在が影を落としている。
[時事通信社]
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