2024-04-23 14:50社会

責任追及に期待と憤り=事故の風化懸念、訴訟に参加―息子亡くした父・知床観光船事故

網走港に陸揚げされる観光船「KAZU I(カズワン)」=2022年6月1日、北海道網走市
網走港に陸揚げされる観光船「KAZU I(カズワン)」=2022年6月1日、北海道網走市

 「日がたつほど、もどかしさが増してきた」。知床観光船事故で長男を亡くした男性(67)=千葉県松戸市=は、海上保安庁による運航会社などへの刑事責任追及に期待を寄せる一方、捜査の長期化に憤りを募らせる日々が続く。
 長男の※(※木ヘンに勝)島優さん=当時(34)=は、北海道旅行中に事故に遭った。発生後、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(60)から一度も謝罪はない。「どんなに断られようが、謝罪に来ようとするのが普通だ」と男性。現地の観光や同業者も大きな打撃を受けたが、同社長が何の責任も問われずに今も日常生活を送っていると思うと怒りが込み上げる。昨年9月に公表された運輸安全委員会の事故調査報告書も、原因究明や再発防止が目的だったことから内容に「歯がゆさ」を感じた。
 事故から2年が経過するが、男性は「もう少ししたら立件されると思う」と期待を込める。ただ、「いつまでも『のろのろ』だ。立件がいっこうに進まない」とも話し、海上保安庁の捜査が長引くことにいら立ちも見せる。
 被害者弁護団は昨年12月、運航会社と桂田社長を相手取り、一部遺族が損害賠償を求める訴訟を起こす方針であることを明らかにした。男性も「『とんでもないことをした』と分からせたい」と加わる考えだ。提訴報道などで、安全運航の重要性を訴え続けたいとの思いもある。事故の風化も強く懸念しており、網走市内で保管されている観光船「KAZU I(カズワン)」の永久保存を願う。
 「悲しい気持ちは全然変わらない」。優さんの部屋は当時のままで、風呂に入るたびに冷たい海で命を落とした姿が頭をよぎる。
 事故当日は男性の誕生日だった。優さんが旅行前に用意していたメッセージカードとプレゼントには手を付けられずにいる。「あまりそのままにしておくのも息子に申し訳ない」。男性はそろそろ開けようと思い始めている。 
[時事通信社]

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