2024-04-18 16:13TOPICS

「加害者の経験」再発防止の糧に=事故なくすため続ける発信―遺族の松永さん・池袋暴走5年

妻の真菜さん、娘の莉子ちゃんと過ごした部屋で、飯塚幸三受刑者からの回答を読む松永拓也さん=10日午後、東京都内(一部、画像処理してあります)
妻の真菜さん、娘の莉子ちゃんと過ごした部屋で、飯塚幸三受刑者からの回答を読む松永拓也さん=10日午後、東京都内(一部、画像処理してあります)

 2019年に東京・池袋で飯塚幸三受刑者(92)の運転する車が暴走し、松永真菜さん=当時(31)=と娘の莉子ちゃん=同(3)=が死亡した事故から19日で5年となる。松永さんの夫拓也さん(37)は、かつて法廷で対峙(たいじ)した飯塚受刑者と近く面会する予定だ。対話を通じ、「加害者の経験を交通事故防止の糧にしたい」と語る。
 拓也さんは3月、犯罪被害者が刑務所職員らを通じ、受刑者に自分の思いを伝える「心情等伝達制度」を活用し、高齢になっても運転を続けた飯塚受刑者に質問を投げ掛けた。「どうすれば事故を起こさずに済んだか」。いくつかの問いとともに「近いうちに面会したい」とも要望した。
 飯塚受刑者からは今月5日に回答があった。「運転しないことが大事だ」と説明し、「(遺族らに)申し訳ない」と謝罪の言葉が添えられていた。面会に応じる考えも明らかにした。
 拓也さんは面会が実現した暁には、飯塚受刑者に対し、「なぜ運転をやめなかったのか」との疑問をぶつけるつもりだ。「加害者の言い分にも再発防止のヒントが隠されている。それを発信し、多くの人が知るのは有益だと思う」と説明する。
 事故からの5年を振り返り、「2人の命は戻ってこない。むなしさや寂しさ、悲しさはずっと残っている」と苦し気な表情を見せる拓也さん。刑事や民事の裁判で当初、事故原因を「車の不具合」と訴え、無罪を主張していた飯塚受刑者の態度には「今でも腹は立つ」と憤る。
 一方で、「いつかは(飯塚受刑者と)しゃべりたい」という気持ちも公判中から抱いていた。東京地裁で禁錮5年の実刑判決が確定し、「罪を償ってほしいという目的は達成した。腹は立つけど内に秘める。(面会で)彼を責めるつもりはない」と語る。
 拓也さんは事故直後からSNSや講演で、積極的に遺族の思いを発信してきた。誹謗(ひぼう)中傷を受け、投稿をためらったこともあるが、「発信をやめようと思ったことは一度もない」と断言する。根底にあるのは「2人の命を無駄にしたくない」という思いだ。「事故を減らすため、今後も多くの人に自分の思いを伝えていきたい」。 

最新動画

最新ニュース

写真特集