国スポ見直し論が急浮上=各知事、人口減・財政難に悲鳴―地域ブロックごと開催案も
国民体育大会(国体)から今年改称された国民スポーツ大会(国スポ)に対し、全国の知事の間で抜本的な見直しを求める声が高まっている。人口減少が進む中、開催自治体の財政負担が重いことが主な要因。現在の都道府県ごとの開催を地域ブロックごとにして負担を分散する案も出ており、全国知事会は今後、国や日本スポーツ協会への要望を取りまとめる。
口火を切ったのは知事会長(宮城県知事)の村井嘉浩氏。今月8日の定例記者会見で国スポについて「廃止も一つの考え方」と言及した。15日には「各都道府県持ち回りではなく、(ブロック単位など)ゼロベースで考え直す機会になれば」と真意を説明した。
1946年に始まった国体は「戦後復興で国民が一致団結できる大イベント」(村井氏)だった。複数の自治体で共同開催する年などもあったが、原則各都道府県が持ち回りで開催。2035年以降3巡目となるのを前に、村井氏は行政のスリム化の一環で抜本的見直しを提起。「人口が減り、税負担が重くなる中で、みんなが納得できる税金の使い方を考えるべきだ」と訴えた。
同氏の「廃止」発言を受け、岩手県の達増拓也知事は「県の持ち出し予算や動員しなければならない人手の負担が大きい」と強調。島根県の丸山達也知事は「都市と地方の格差が縮まらない中で、50年後にできるわけがない」と断言し、愛知県の大村秀章知事も「今までと同じように3巡目を続けることはない」と述べるなど、同調する意見が相次いだ。
一方、大会そのものについては「廃止には反対だ」(山口祥義佐賀県知事)「すぐになくすとはいかない」(佐竹敬久秋田県知事)などと存続を求める声もあった。
開催にはどの程度かかるのか。22年大会を開いた栃木県は「何でも施設を新しくするのではなく、改修や仮設で対応するなど工夫した」(担当者)ものの、施設整備費が652億円、運営費などが177億円で総額829億円を支出。国からの補助はわずか5億円だった。
スポーツ行政に詳しい中村祐司宇都宮大教授は「国スポは選手の競技力向上や各地のスポーツ環境整備につながるが、準備段階も含め行政にかかる負担が非常に大きい。村井知事らの発言を問題提起と受け止めて議論すべきだ」と指摘する。
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