米、総力挙げて「最悪」に備え=イスラエル防衛、緊迫の数時間―岸田氏訪問中に大統領決断
【ワシントン時事】イランからの無人機や弾道・巡航ミサイルによる大規模攻撃を、米国とイスラエルは「99%迎撃した」(米政府高官)。甚大な被害が出れば、本格的紛争に発展する恐れがあっただけに、バイデン米政権は外交・軍事両面で総力を挙げて最悪の事態回避に取り組んだ。
今月1日、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)らはホワイトハウスで開かれたパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの軍事作戦を巡る協議の直前に、在シリア・イラン大使館の空爆を知らされた。「これは波紋を広げる」。米高官の一人は当時の印象を振り返った。
情勢が緊迫し始めたのは、ラマダン(断食月)が終わった10日以降。折しも岸田文雄首相の訪米中だった。米高官によれば、首相との一連の日程の合間にオースティン国防長官やサリバン氏から報告を受けたバイデン大統領は、イランによる攻撃に備え、ミサイル駆逐艦などの再展開を承認した。
ブリンケン米国務長官は10日以降、中国などイランとつながりのある関係国の外相らに相次いで電話し「緊張激化は誰の利益にもならない」と伝え、イランに自制を促すよう働き掛けた。イランと国交がない米国は、利益代表を務めるスイスを通じイランとも連絡を重ねたという。
各国が危機感を強める一方、イランにも衝突拡大は避けたいとの思惑があったもようだ。ロイター通信によると、イランのアブドラヒアン外相は14日、作戦について「限定的なものになる」と米国などに事前に通告していたと明らかにした。米側は否定しているが、トルコ政府は通告があったことを認めているという。
バイデン氏は13日午後、東部デラウェア州での週末の静養を急きょ切り上げてホワイトハウスに戻り、地下のシチュエーションルーム(作戦司令室)でイランの攻撃に備えた。一時は100発を超える弾道ミサイルが一斉にイスラエルに向かうなど、「非常に緊迫した数時間」(米高官)を過ごしたという。
バイデン氏は13日夜、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、被害は軽微だったとイスラエルの防衛力を称賛した。米高官は「準備と計画が成功したことが分かると、(米政府内に)安堵(あんど)が広がった」と述べた。
[時事通信社]
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