2024-04-12 04:06政治

民主・共和両党の共感狙う=岸田首相、大統領選を意識―米議会演説

 【ワシントン時事】岸田文雄首相は11日午前(日本時間12日未明)、日本の首相として9年ぶりとなる米議会上下両院合同会議での演説で、日米が「グローバルなパートナー」として国際社会の課題に共に対応する重要性を訴えた。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台頭で国際情勢が混迷を深める中、11月の米大統領選の結果によっては共同歩調が揺らぎかねないとの危機感をにじませた。
 「米国は独りではない。日本は米国と共にある」。首相は民主、共和両党の議員が居並ぶ会場でこう語り掛けた。首相周辺は「国際秩序を守る米国の負担が重くなっている。日本も支えるということだ」と解説。演説づくりに関わった一人は「トランプ前大統領を意識した」と明かす。
 安倍晋三元首相は2015年の米議会演説で、太平洋戦争を経験した日米の和解を強調した。今回、岸田首相は日本が国際秩序維持に貢献できる立場に変わったとして具体例を挙げ説明した。背景には、日本を取り巻く国際環境の変化と米国の政権交代に対する不安がある。
 首相は訪米前、周囲に「日本が米国をサポートする時代になった」と力説していた。演説では、日本が「控えめな同盟国から強くコミットした同盟国」に変化したとアピールし、防衛費増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に言及。「超党派の支持が頂けるのではないか」と民主、共和の党派を問わず、自身の取り組みに共感を求めた。
 首相は中国を名指しでけん制し、「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」と強調することも忘れなかった。一方で、米国に広がる「米国第一主義」を念頭に「自国の役割に自己疑念を持たれている」と指摘した。日本政府関係者は「内向きでは困るというメッセージだ」と説明する。
 共和党の一部がウクライナ追加支援予算案に反対している米議会の現状を踏まえ、米側から事前に「支援に触れてほしい」と要請されていた。首相は日本の支援を紹介する形でこれに呼応したが、外務省関係者は「国際秩序を維持するという米国の意志は低下している。演説が響くかは分からない」と不安を漏らした。 
[時事通信社]

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