「地域の暮らし、残したい」=処分前の古道具譲り受け―長野のボランティア男性・能登地震
能登半島地震の被災地では、地域の昔の暮らしをしのばせる古道具を少しでも残そうと奔走するボランティアがいる。長野県佐久穂町で古物商などを営む酒井洋さん(44)は「大切に使われていた生活道具を災害ごみにしたくない」との思いから、解体前の家屋にあった農具や漁具などを被災者支援として有償で譲り受け、販売する活動を行っている。
酒井さんは、地震発生後の1月7日から石川県珠洲市に拠点を置き、近くの避難所の炊き出しや入浴支援などのボランティアを続ける。その傍らで2月から、解体直前の被災家屋で見つかった古道具を集め始めた。漁で網を浮かすためのガラス玉や古いたんす、右から左に「肝油(かんゆ)」と書かれた昔の木箱など、その数は1000点以上に上る。
東日本大震災でボランティアに入った際も、民具が災害ごみとして処分されていたのを見た酒井さん。もともと古い民具が好きだったということもあり、買い取るのは高級な骨董(こっとう)品ではなく、古い農具や漁具などが中心だ。支払額は「ほんの気持ち程度」だが、「古道具を買い取って販売した売り上げでボランティア活動を続けることが、今の私にできることだと考えた」と話す。
譲り受けた道具の中で最も多いのが、ノリを干すための竹製のかご。天然の岩ノリが12月から3月にかけて採れる能登半島ならではの漁具という。木箱に所狭しと収められた真っ赤なお膳や漆器は、祭りの夜に客人をもてなす「ヨバレ」という風習に使われていたものだ。
古道具は今月13~14日に行われる長野県松本市のイベントなどで販売する予定だ。酒井さんは「販売時は古道具が能登半島でどのように使われてきたかを伝えたい。実際に手に取ることで、被災地に関心を持つ人が増えてほしい」と話した。
[時事通信社]
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