自民、内向きの車座対話=国民の「生の声」届かず?
自民党が派閥裏金事件を受けて取り組む「政治刷新車座対話」に内向き志向が目立っている。信頼回復と政治改革に向けて「国民の声を聞く」のが狙いとされたが、参加者の大半が党地方組織の関係者ら「身内」。党外の声を広く聞く姿勢に消極的で、党内からも「茶番」との指摘が出ている。
車座対話は、岸田文雄首相(党総裁)が3月17日の党大会で提唱。「私自身や党幹部が全国に足を運び、党員・党友、国民の声を聞く」とたんかを切った。茂木敏充幹事長が金沢市で行ったのを手始めに47都道府県全てで実施する計画だ。
首相は今月6日に熊本市で開いた車座対話に初めて出席。2部構成で、前半は県連幹部らが参加。後半は一般党員・有権者との意見交換と銘打ったが、実際は参加者十数人の大半が商工会、農業、漁業など業界団体の代表者。厳しい声もあったが、「信を問うなら多くの国民が応援すると思う」との激励や「予算委員会で政治資金問題に時間を使うのはもったいない」と野党批判とみられる意見もあった。
自民が2009年に野党に転落した後、当時の谷垣禎一総裁ら幹部が「ふるさと対話集会」と称して全国を回り、12年の政権奪還につなげた。麻生太郎副総裁は先月の麻生派会合で「生の声を聞くことは大変有意義だった」と振り返った。
ただ、今回の車座対話が谷垣時代と同様に「生の声」を聞いているとは言い難い。これまでに首相や茂木氏、渡海紀三朗政調会長が6府県を訪れたが、対話相手の多くが地方議員や党支部の関係者。開催場所も党県連が目立つ。
立憲民主党の泉健太代表は9日の党会合で「国民不在の対話集会を開いている」と指摘し、「こんなことでは到底、自民党は信頼回復できない」と批判した。
自民内からも「国民から声を聞いた方がいい」(参院中堅)、「世論の厳しさにじかに触れるべきだ」(安倍派中堅)との声が出ており、党関係者は「茶番だ。これでは国民からの信頼回復につながらない」と嘆いた。
[時事通信社]
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