2024-04-09 14:27社会

小さな仏壇で「被災者の心支える」=輪島ゆかり、熊本から無償提供―能登地震

被災者に仏壇を手渡す永田幸喜さん=3月29日、石川県輪島市
被災者に仏壇を手渡す永田幸喜さん=3月29日、石川県輪島市

 能登半島地震の被災者に、熊本市内の仏壇店が小さな仏壇を無償提供している。店は石川県輪島市の伝統工芸「輪島塗」漆器の行商人だった先代社長が興した。息子で2代目の永田幸喜さん(61)は「店があるのは輪島のおかげ。石川に限らず、広く被災者の心を支えたい」と語る。
 「今から全壊した実家に位牌(いはい)を探しに行こうと思っていた。見つけたら供えたい」。3月下旬、避難所となっている輪島高体育館(同市)で仏壇を受け取った60代女性はこう言って喜んだ。この日、永田さんは「父に代わって輪島の人に直接お礼を伝えたい」と仏壇を携え、片道約1000キロの道のりを車で駆け付けた。
 店は「輪島漆器仏壇店」。仏壇を手掛けるようになったのは、65歳で他界した先代の父孝さんと母ハルヨさん(85)が熊本で漆器の行商をしていた際、「仏壇も欲しい」と要望を受けたのが始まりだ。孝さんは海外製が多く流通する中、品質にこだわった天然漆の自社製品を安価に販売したいと、35年前に創業。愛してやまなかった「輪島」を社名に冠した。
 永田さんが無償提供を思い立ったのは、2016年に起きた熊本地震の被災者の「小さくても仏壇があれば良かった」という一言がきっかけという。きり製の仏壇は、避難先でも先祖や家族の供養ができるよう、高さ34センチ、幅19センチにした。本来なら5万円近くするが、これまでに、20年熊本豪雨の被災者や新型コロナウイルスで家族を亡くした人に計400基超を無料で届けた。
 能登地震での活動は、輪島市内の惨状に涙するハルヨさんの姿を見て決意したという。思いを仏壇に託し、被災者に手渡す。「大切な人や家を失った被災者の心のよりどころになってほしい」。 
[時事通信社]

被災者に仏壇の説明をする永田幸喜さん(奥)=3月29日、金沢市
被災者に仏壇の説明をする永田幸喜さん(奥)=3月29日、金沢市

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