日銀、マイナス金利解除=植田総裁「2%実現見通せた」―YCC撤廃、金融政策正常化へ
日銀は19日、前日に続き金融政策決定会合を開き、大規模金融緩和の一環として実施してきたマイナス金利政策の解除を決めた。会合後に記者会見した植田和男総裁は、2%物価上昇目標の持続的・安定的な達成について「実現が見通せる状況になったと判断した」と強調。2013年4月から11年続いた異例の大規模緩和は「役割を果たした」とし、金融政策正常化へ大きく踏み出した。
日銀による利上げは07年2月以来、17年ぶり。長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作(YCC、イールドカーブコントロール)の撤廃も決定した。植田氏は「短期金利を主たる政策手段とする普通の金融政策に戻る」と説明した。
一方、今後の金融政策運営に関しては「緩和的な金融環境が継続する」と指摘。急速な利上げは想定しておらず、「(短期金利の)急激な上昇という経路は避けられる」との認識を示した。
マイナス金利は16年2月に導入。金融機関が日銀に預け入れる当座預金の一部に、マイナス0.1%の金利を適用してきた。今回の修正で、この金利を0.1%に引き上げ、短期金利(無担保コール翌日物レート)を「0~0.1%程度」に誘導する。
YCCは撤廃するが、企業の設備投資などに影響を与える長期金利の急騰(債券価格の急落)を避けるため、大量の国債買い入れは当面継続。規模は現在と同様の月間6兆円程度とする。ただ、植田氏は市場の金利形成機能回復のため「将来どこかの時点で買い入れ額を減らしていくことも考えたい」と述べた。
事実上、株価を下支えしてきた上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の新規買い入れも終了する。社債などの購入は段階的に減らし、1年後をめどに終える。
日銀が政策修正を見極める上で重要視した24年春闘では、大企業の満額回答が続出。連合が15日公表した経営側からの回答の第1回集計結果は賃上げ率が平均5.28%と、33年ぶりの高水準となった。植田氏は「判断の大きな材料にした」と述べ、結果を受けて賃金と物価がともに上昇する好循環の達成に自信を深めたことを明らかにした。
◇日銀総裁記者会見のポイント
一、2%の物価目標の実現が見通せる状況になった
一、短期金利を政策手段とする普通の金融政策に戻る
一、今後も緩和的な金融環境が続く
一、異次元の緩和は、役割を果たし終了
一、連合の賃上げ回答集計は判断の大きな材料
一、預金・貸出金利が大幅に上昇するとはみていない
一、どこかの時点で国債買い入れ額を減らしていく
一、異次元緩和で過去に買った国債、上場投資信託(ETF)の遺産は当面残り続ける
◇日銀を巡る主な動き
2006年 7月 ゼロ金利解除
07年 2月 追加利上げ
12年12月 安倍晋三首相就任
13年 1月 政府・日銀が2%の物価目標に向けた共同声明を公表
3月 黒田東彦総裁就任
4月 質的・量的緩和(異次元の金融緩和)導入
16年 2月 マイナス金利導入
9月 長短金利操作(YCC)導入
21年10月 岸田文雄首相就任
23年 4月 植田和男総裁就任
10月 長期金利1%超を容認
24年 3月 マイナス金利解除決定
(注)肩書は当時
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