「もしトラ」対応に本腰=安保・貿易懸念、両にらみで備え―日本政府
米大統領選の共和党候補争いでトランプ前大統領の指名獲得が確実となったことを受け、日本政府は同氏陣営への対応に本腰を入れる。11月の本選ではバイデン大統領再選もトランプ氏の政権復帰も同程度で可能性があると判断。現政権との関係維持を前提としつつ、両にらみで備える。
林芳正官房長官は7日の記者会見で、大統領選について「わが国としても関心を持って注視している」と語った。
「もしもトランプ氏が返り咲いたら」は世界的な関心事。本選の行方が見通せないため、外務省はワシントンの在米大使館や各地の総領事館をフル稼働させ、接戦州の情勢やトランプ氏の発言を分析している。過去に築いた人脈を基に、「第2期トランプ政権」で要職を占めそうな人物に水面下で接触を図る考えだ。
トランプ氏が勝利した2016年の大統領選で、日本政府は当初、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官が優勢とみて、トランプ陣営への対応が手薄になったという。この経緯を踏まえ、外務省幹部は「双方と話すのは鉄則だ」と語る。
岸田文雄首相は「日米同盟は重要との認識は、選挙がどんな結果になっても不変だ」と強調する。しかし、安全保障や貿易に関するトランプ氏の言動は懸念材料だ。
最近は北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対する防衛義務に関して「金を払わなければ守らない」と発言し、批判を招いた。在韓米軍撤退に言及した過去があり、台湾有事などに絡んで日本にさらなる「貢献」を迫る可能性もある。
トランプ氏はロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に消極的。中国の威圧的行動を念頭に支援継続を訴える日本と相いれず、政府内には「返り咲けば本当に打ち切るかもしれない」との見方が広がる。
自動車など製造業の保護を掲げるトランプ氏は関税の大幅引き上げを主張する。自民党のベテラン議員は「トランプ氏は外交よりディール(取引)を重視する。再選されれば重大な不安定要因だ」と警戒を強めている。
首相は4月に国賓待遇で訪米し、バイデン氏との会談で強固な同盟関係を確認。併せて、日本企業の投資先となっている地方都市を訪れ、雇用創出など対米投資の「実績」をアピールする考えだ。首相周辺はその狙いについて「投資を求めるトランプ陣営を意識した」と明かす。
[時事通信社]
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