2024-03-02 21:14

「裏金」追及、第2幕へ=岸田首相、巻き返し見通せず―関門突破も続く苦境

 2024年度予算案の審議は、4日から参院に舞台を移す。政府・与党は、今年度内の自然成立を期限ぎりぎりで確定させたが、野党は自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の追及をさらに強める方針。今国会の関門の一つを突破したにもかかわらず、苦境が続く岸田文雄首相に巻き返しのきっかけは見えない。
 ◇執念
 「予算委員会の在り方を直接指示したことは一度もない」。首相は2日の衆院予算委で、立憲民主党の江田憲司氏から採決強行を指示したか問われ、こう反論した。
 しかし、自然成立に最後までこだわったのは首相自身だと、複数の与野党関係者が口をそろえる。内閣支持率が落ち込む中、予算案の成立にめどが立たないことで、求心力のさらなる低下が懸念されたためだ。自民国対幹部は「穏便に進める手もあったが、首相の執念だった」と明かす。
 野党側は2日の衆院通過を容認する見返りに、衆院政治倫理審査会で裏金事件の審議を続けることなどを、与党側に受け入れさせた。今後、参考人招致や証人喚問もちらつかせ、一段と揺さぶりを強める構えだ。
 参院政倫審でも近く審査が始まる見通しで、野党側は安倍派の世耕弘成前参院幹事長ら32人の出席を要求。自民若手は「希望者がみんな出ると大変なことになる」と懸念を示した。
 ◇再発防止
 参院予算委は4、5両日に首相と全閣僚が出席して基本的質疑を行う。野党は裏金事件の実態解明と合わせ、再発防止に向けた政治資金規正法改正を主張。議員本人の責任も問う「連座制」導入などの実現を目指している。自民が消極的な企業・団体献金の廃止や、政策活動費の使途公開も迫る考えだ。
 能登半島地震の対応も重要なテーマとなる。政府・与党は、予算案に復旧・復興の財源も含まれていると指摘。早期成立の必要性を強調する。これに対し、野党は「3月までは今年度の予備費で対応できる。(地震対応に)影響が出るというのはうそだ」(立民の泉健太代表)と反論。丁寧な審議を求めている。
 衆院予算委の審議では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡り、盛山正仁文部科学相の進退が焦点となった。首相が更迭を拒む中、野党は引き続き「ターゲット」に据える構えも示している。
 ◇足並み
 裏金事件を巡り、立民、日本維新の会、共産、国民民主の野党4党は予算案を「人質」に衆院政倫審の「完全公開」を迫るなど、連携を図ってきた。ただ、最終盤では足並みが乱れた。
 維新と国民は、採決を遅らせる立民の抵抗戦術を「昭和の政治」などと批判。鈴木俊一財務相の不信任決議案でそろって反対に回ると、立民も方針転換せざるを得なくなった。
 「野党が一枚岩になりきれなかったことで自然成立が決まった」。自民幹部はこう指摘した。 
[時事通信社]

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