2024-02-28 18:27World eye

デルモンテ農園の警備員、組織的に暴行・レイプ・殺人か ケニア

【ティカ(ケニア)AFP=時事】ケニアにある米野菜・果実加工大手デルモンテの農園が、警備員による暴行、レイプ、殺人などで訴えられている。≪写真はケニアのナイロビ郊外カバティにある米野菜・果実加工大手デルモンテの農園の向かいで、パイナップルを売っている闇市場≫
 首都ナイロビ郊外に同社が所有する広大なパイナップル農園の元警備員ダニエル・カマウ・ワイナイナさん(58)は「指示は明確だった。窃盗犯を見たら追いかけて捕まえ、徹底的に殴れと命じられた」と語った。
 デルモンテが直接雇用する警備員に暴力を受けたとする被害者や親族10人とNGO2団体は昨年12月、高等裁判所に同社を訴えた。
 警察は同月、デルモンテの農園からパイナップルを盗もうとしたとされる男性4人が遺体で見つかった事件についても、殺人の疑いで捜査していると発表した。
 AFPはティカ近郊の農園で警備員による暴力を目撃した、あるいは自分も被害に遭ったという人々に話を聞いた。
 デルモンテは世界での売上高は40億ドル(約6000億円)を超え、ケニアでは約6000人を雇用する。AFPはこれらの件について数回取材を申し込んでいるが、これまで一切返答はない。
 ■過激化する窃盗対策
 デルモンテの農園では確かに窃盗が頻発している。AFPの記者も1月に2日ほど目撃した。どちらとも若者たちが、盗んだパイナップルが詰まった袋を徒歩またはオートバイで運んでいた。発生したのは午後1時ごろ、警備員が交代する時間帯だった。
 20代のある男性はAFPに対し、12月に川で遺体で見つかった4人と当日一緒だったと語った。「待ち伏せしていた警備員らに怒鳴られた。追いつかれて、金属や木の棒で殴られた」。
 この男性はなんとか茂みに隠れたが、他の4人はひどく殴られていたという。「その後、みんな死んだと思ったようで、警備員たちは証拠を隠すため遺体を川に捨てた」
 デルモンテは「検視報告書によると死因は水死で、犯罪を示すものはない」としている。しかし独立機関のケニア国家人権委員会(KNCHR)は予備調査の結果として、「4人は水死させられる前に襲撃されていたことが明らか」だと指摘した。
 匿名を条件にAFPの取材に応じたKNCHRの調査官によれば、デルモンテ警備員の暴力は以前よりも「巧妙」になっているという。「以前は殴り殺して、遺体を川に捨てていた。今は殴ってから、まだ息の根があるうちに水に漬け、検視で溺死と判断されるようにしている」
 主に警備員として25年間デルモンテで働いていたワイナイナさんも、パイナップル泥棒を殴ったことがあるとAFPに語った。「上からの命令で殴ることもあった。さもなければクビだと脅された」
 ■問われない罪
 英紙ガーディアンと英NPO調査報道局(BIJ)は昨年6月に発表した共同調査で、過去10年間にこのデルモンテ農園で6件の殺人があったとする疑惑を報告している。
 これを受け、英大手スーパーマーケット、テスコはケニア産パイナップルの販売を停止。ウェイトローズもデルモンテ農園のパイナップルの販売を停止した。
 訴状によると、地元の人々はデルモンテ農園がある場所を先祖伝来の土地の一部と主張しており、長年広大な敷地内を往来してきた。そのため、デルモンテが配置した警備員との衝突が起き、警備員が「不法侵入者」に暴行、殴打、拷問を加えたり、レイプや殺人を行ったりしているとしている。
 住民側のムビユ・カマウ弁護士は、デルモンテの警備員は「免責扱いだ」「ほとんど対処されていないことが問題だ」とAFPに語った。またケニアの行政機関、法的機関、警察の怠慢でもあると非難した。
 州知事、警察、司法省のいずれもAFPの取材要請に応じていない。
 ■「残忍かつ組織的」
 「ボダボダ」と呼ばれるオートバイタクシーの運転手、サイモン・カマウ・ワマイタさん(33)もデルモンテの警備員から虐待を受けた。裁判に加わりたいと言う。
 2020年10月、石炭の入った袋を運びながら農園を横切ろうとして声を掛けられた。「警備員たちは一斉に襲いかかり、容赦なく殴ってきた。犬を放って私を殺そうとした」。鼻先にはそのときの傷が残っていた。
 30代の女性ブリジットさん(仮名)は2002年、12歳のときに母親と薪を集めに行った農園で、3人の警備員に集団レイプされたとAFPに語った。
 「服を脱げと言われて拒否したら、無理やり脱がされ、地面に押さえつけられて交互にレイプされた」
 「羞恥心」から夫にも被害について話したことがないという。デルモンテに損害賠償を求めているが、裁判は起こしていない。
 英国の法律事務所リー・デイは、デルモンテの警備員から虐待を受けたという134人の代理人を務めている。ウェブサイトによると殺人5件、レイプ5件が含まれ、一部の事件は2013年にさかのぼる。
 担当弁護士のリチャード・ミーラン氏は「ケニアのデルモンテ警備員による人権侵害疑惑は、パイナップル窃盗を抑止するために編み出された方法が残忍かつ組織的で、人権を尊重する企業のやり方ではない」と述べた。【翻訳編集AFPBBNews】

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