停戦合意でもゲリラ戦継続か=復興支援は対ロ圧力―倉井高志前駐ウクライナ大使
2021年まで駐ウクライナ大使を務め、ロシア公使の経験もある倉井高志氏が25日までに時事通信のインタビューに応じた。ウクライナの戦況に関し、停戦合意が成立してもゲリラ戦などは続くと指摘。復興支援は対ロ圧力につながるとして日本の取り組み強化を訴えた。主なやりとりは以下の通り。
―ウクライナでの戦闘が長期化している。
ウクライナにとって自分たちの国と民族の生存を懸けた戦いになっている。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナを消滅させようとしている。こういう戦闘が短期間で終わることはない。
―昨年からのウクライナ軍の反転攻勢は成果が挙がっていない。
反転攻勢が成功しなかったのは紛れもない事実だ。ロシアは3月の大統領選前に、とにかく政治的な面で成果をつくろうとしている。全体の戦況としてウクライナに優位な状況になっていない。
―早期停戦を求める声も出ている。
2014年のウクライナ東部紛争を巡る「ミンスク合意」は「停戦」の合意だった。しかしロシアは守らず、攻撃を繰り返し、今に至っている。ウクライナ国民は、停戦合意はすぐ破られると思っている。仮に停戦が成立しても、ゲリラ戦のような形で戦闘が続くだろう。中長期的に見ると、ウクライナ全土がロシアに占領されるか、あるいはロシア軍を退去させるかの二つしかない。この戦争は、ロシアが一方的に攻め込んできた。ウクライナに停戦を勧めるのは降伏を勧めるのと同じことだ。
―欧米の「支援疲れ」も指摘されている。
米国の支援は確かに不透明になっている。欧州ではウクライナを軍事的に支援しなければいけないという認識は高まりつつある。ウクライナがロシアの支配下に入れば、さらにロシア軍が勢力を拡大し、今の支援よりも高いコストを払わなければならなくなる。2月1日に欧州連合(EU)は500億ユーロ(約8兆円)の支援を決めた。
―米大統領選でトランプ氏が当選すればどうなるか。
予測が難しい人だ。ウクライナ支援をゼロにする可能性はあるが、今の発言を前提に考える必要はない。
―日本はウクライナの復興支援に取り組む姿勢を示している。
復興支援はロシアに対するプレッシャーになる。政府は、民間投資が進むような環境整備に取り組むべきだ。
[時事通信社]
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