政府、与正氏談話を「留意」=北朝鮮の意図、分析急ぐ
北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長が談話で、岸田文雄首相の訪朝に言及したことを受け、日本政府は意図などに関する分析を急ぐ。林芳正官房長官は16日の記者会見で「留意している」と強調。1月の金正恩総書記による能登半島地震の見舞い電報に続くもので、日朝交渉に向けた「秋波」との見方もあるが、北朝鮮はこれまでも硬軟両様で外交の主導権確保を図ってきた経緯があり、慎重に動向を見極める構えだ。
与正氏は15日の談話で、日本が政治的決断を下せば「首相が平壌を訪問する日が来る可能性もある」と表明。同時に、日本人拉致問題を「障害物」としないよう譲歩を迫った。
これに対し、林氏は会見で「評価を含め、それ以上の詳細は今後の交渉に影響を及ぼす恐れがあるため、明らかにすることは差し控えたい」と述べるにとどめた。
首相は日朝首脳会談の実現に向けて再三、自身直轄のハイレベル協議を進める意向を示している。9日の国会審議でも「さまざまなルートを通じて働き掛けは絶えず行っている」と説明した。
このタイミングで正恩氏の電報、与正氏の談話と相次ぐ北朝鮮側の発信を巡り、日本政府内には「対日関係を動かそうとするメッセージだ」(関係者)と期待する声が出ている。内閣支持率の低迷に苦しむ首相が、日朝交渉で政権浮揚を狙うとの臆測もくすぶる。
一方、外務省関係者は11月の米大統領選に触れつつ、「『ポスト・バイデン』を見据え、いろいろな球を投げている」と指摘。さらに「日米の離間を狙う思惑もあるのではないか」との見方を示した。
与正氏が拉致問題で譲歩を迫ったこともネックだ。林氏は会見で「既に解決したとの主張は全く受け入れられない」と反発。問題解決を棚上げしたまま訪朝に踏み切れば、「政権が吹き飛ぶ」(政府筋)ような事態を招きかねず、外務省関係者は「この部分が変わらないと、日本側はのめない」と述べた。
[時事通信社]
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