2024-02-15 18:19World eye

スピード違反取り締まり機の破壊行為めぐり世論二分 伊

【ローマAFP=時事】イタリアではここ数か月、スピード違反を取り締まる装置が何者かに破壊される被害が相次ぎ、世論が二分している。一部のドライバーは溜飲を下げ、ヒーロー視しているが、ゆがんだ正義感によって人命を危険にさらしていると非難する声もある。≪写真は速度違反取り締まり装置。伊北西部ラニャスコで≫
 ランボルギーニやマセラッティ、フェラーリなどが生まれたイタリアでは、車そのものだけではなく、車をぶっ飛ばして運転することが昔から愛されてきた。
 しかし今日では、多くの国と同様、自動の速度違反取り締まり装置が設置され、運転する際に避けては通れない存在となった。ところが、その機器が次々に破壊され、波紋を呼んでいる。
 ドイツの工具メーカー「フレックス(Flex)」にちなんで「フレキシマン(Fleximan)」と呼ばれるようになった人物は、ここ数か月、北部のベネト州、ピエモンテ州、ロンバルディア州で犯行を繰り返している。フードをかぶった人物の姿はたびたびカメラに捉えられており、時には共犯者の姿も確認されている。
 警察は1月下旬に装置2台を破壊した疑いで50代の容疑者を逮捕したが、フレキシマンではなかったという。
 警察が捜査を進めるうちに、ソーシャルメディアでフレキシマンは人気を集め、スピード違反を取り締まる罰金で政府は「荒稼ぎ」しているという不満を抱く人々から称賛されるようになった。フレキシマンを十字軍の戦士に見立てた商品もネットで販売されている。
 一方で、交通事故で家族を失った遺族は、こうした風潮を非難。交通事故による国内の死者は年間数千人に上っているとして、批判する声もある。
 ■義賊の「ロビンフッド」と比べる指摘も
 地元議員の間でも賛否は分かれている。「犯罪者は許さない」という意見もあれば、黙認とみられる方針を示す議員もいる。
 ベネト州カドーネゲの首長は、地域で破壊された機器について「もともと設置に納得していたわけではなかった。再度設置するつもりはない」と表明した。
 ジョルジャ・メローニ政権寄りの右派リベロ紙は、容認姿勢を打ち出しているわけではないが、フレキシマンの行為は、「しゃくし定規な官僚主義者とモラリスト」への「抵抗」だと書いた。
 一方、中立系のコリエレ・デラ・セラ紙は、「ロビンフッドは富裕層から富を奪って貧しい人を助けたが、フレキシマンは人の命を奪う」と破壊行為を批判した。
 欧州委員会によると、イタリアの交通事故による2022年の死者は3159人。100万人当たり53人が命を落とした計算になり、欧州連合(EU)加盟27か国の平均46人を上回った。
 また、イタリア国家統計局によると、スピード超過は交通事故の原因の第3位で、全体の9.3%を占めている。1位は「脇見運転」で、2位は「信号無視」だ。
 フレキシマンをめぐる議論で国が二分する直前には、マッテオ・サルビーニ副首相兼インフラ・運輸相と北部ボローニャ市当局が交通規制に関して衝突する事態もあった。
 左派が強いボローニャ市当局が、市内を走行する車の制限速度を時速30キロに定めたことをめぐり、サルビーニ氏は「鳥のさえずりを聞くには『理想的』」な速度だと皮肉った。
 これに対し、道路交通安全協会「Asaps」は、時速30キロの自動車にはねられた際の生存率は、時速50キロよりも80~90%高いと指摘した。【翻訳編集AFPBBNews】

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